ドジャース「キケポーズ」と盆踊りの共通点、連帯感を強める「幸せの脳内ホルモン」とは?
「ウェルビーイング」は、1948年の世界保険機関(WHO)設立の際に考案された憲章で、初めて使われた言葉。「幸福で肉体的、精神的、社会的全てにおいて満たされた状態」をいいます。新しい幸せの形として用いられ、最近さまざまな場面で耳にすることが多くなりました。連載『ウェルビーイングの新潮流』第12回では、踊りがもたらす幸福感について、さまざまなケースを見ていきます。 ● 「たくさんの愛が ドジャースを勝利に導いた」 米大リーグのワールドシリーズで今年優勝を果たしたドジャース。メンバー同士の強い絆により生み出されたチームの一体感こそが、スター選手が数多く在籍し、個々の高い能力が光るヤンキースを制したポイントだといえるのではないでしょうか? 優勝を決めた敵地ニューヨークでの第5戦では、5点ビハインドを跳ね返し、頂点に立ちました。 MVPトリオの一人であるベッツ選手は「明らかにうちのチームにはリカバリーする力があったが、それよりもこのチームにはたくさんの愛がある。それが今日の勝利を導いた。愛なんだ。本当にビューティフルなものだ。誰かが故障で欠ければ、誰かが埋める。誰かの不振は誰かがカバーする。シーズン通して貫いてきた精神で勝ち取った世界一だ」と語り、胸を張ったと報道されています。 この発言からもわかるように、今年のドジャースは、欧米では一般的な自分の成績を第一に考える個人主義による利己のマインドよりも“愛”という利他の精神がチーム全体に浸透していた、極めてウェルビーイングな組織でした。その姿勢こそが、彼らの強さの原動力だったことは間違いありません。
● チームが一体感を感じる トレーニング開始前の「ショートダンス」 これまでのさまざまな研究によると、組織としてウェルビーイング向上を目指すことが、次のようなチームメンバーのパフォーマンス向上につながると分かってきています。 ・メンバーが生き生きと働ける ・メンバーが長く働けるようになる ・メンバーのやる気が高まり、定着率が上がる ・メンバー満足度が高まる ・チームの評価が高まり、良い人材の採用につながる ・メンバーの創造力が高まり、良いアイデアが生まれる ・チームへの貢献意欲が高まる ・人間関係の風通しが良くなり、チームとしての機動力が高まる ロバーツ監督はじめとするコーチ陣のリーダーシップとマネジメントによってチームの高いウェルビーイングが実現したことに加え、私がチームの一体感を感じるポイントとして注目したのは、ドジャースの選手が出塁すると全員が必ず行う、片足をあげてクネクネするちょっとユニークなショートダンスです。 面白く可愛らしいこのダンスは、トレーニング開始前の準備運動で、選手全員が一堂に行う「ヒップロック」というエクササイズです。オランダ人トレーナー(フラン・ボッシュ氏)が考案したこのエクササイズは、骨盤と股関節の機能を向上させる効果あるそうです。 エンリケ・エルナンデス(愛称:キケ)選手が出塁時にこのショートダンスを行った動画がドジャース公式で公開され「キケポーズ」として広まりました。 塁に出た選手が踊ると、ベンチの選手たちもそれに反応して皆で同じ踊りをするのがかわいいとSNSなどで話題になりました。