岐路に立つイスラエルのガザ攻撃 戦いは終わるのか
7月8日に始まったイスラエルの本格的なガザ攻撃は、7月17日の同国の陸上部隊のガザ侵攻によって新しい段階に入りました。 【図解】イスラエルとパレスチナ自治区の位置関係は
ヒズボラに学んだ?ハマス
ハマスの作戦は、恐らく2006年のレバノンのシーア派の組織であるヘズボッラー(ヒズボラ)のイスラエルとの戦争に学んでいるようです。この戦争では、イスラエルは圧倒的な空軍力でレバノンを爆撃し続けました。しかしヘズボッラーの方も、絶えることなくイスラエルにロケット弾を発射し続けました。空軍力だけでは、ロケット弾を止められなかったので業を煮やしたイスラエルは陸軍部隊をレバノンに侵攻させました。陸上での接近戦になると、イスラエルの空軍も爆撃がしにくくなります。味方に被害が及ぶのを懸念するからです。イスラエルのハイテク兵器の優位が減じます。ヘズボッラーは、この陸上戦闘でイスラエル軍に大きな打撃を与えました。 ハマスも同じように爆撃を受けても、ロケット弾をイスラエルに向けて発射し続けました。またガザの地下からトンネルを掘ってイスラエルに兵員を送り込もうとしました。当初は慎重であったイスラエルのネタニヤフ首相も、ついにガザに陸上部隊を侵攻させました。トンネルの発見と破壊をイスラエル軍が行いました。しかし、さらに多くのパレスチナ人が死傷しました。死者の数は23日現在で600人を越えました。また、さらに多くが負傷しています。しかも、その大半が女性や子供などの非戦闘員です。イスラエルに対する国際的な批判が高まっています。
イスラエルがロケット弾を止めるには
イスラエルは、軍事的な困難にも直面しています。陸上侵攻にもかかわらず、ガザからのロケット弾の発射を止めることができません。7月22日にミサイルがイスラエルの主要な空港であるベングリオン国際空港の付近に着弾しました。これを受けて各国はイスラエルへのフライトを停止しました。イスラエルにとっては心理的にも経済的にも大きな打撃です。加えてイスラエル兵の死傷者も増えています。イスラエル兵の死者は20人を越えました。 ネタニヤフ首相がハマスのロケット弾を止める方法は二つです。一つは、さらに多くの陸軍部隊を送り込んでガザの全域を占領するという方法があります。これには、双方に大きな流血が出るでしょう。もう、一つの方法はハマスの条件を受け入れて停戦することです。ハマスの条件はガザに対する経済的な封鎖の解除です。しかし、これはハマスにとっては大きな政治的な勝利になります。ネタニヤフ首相は国内のタカ派からの激しい批判にさらされるでしょう。ネタニヤフが直面しているのは、選択ではなくディレンマなのです。 (高橋和夫・放送大学教授)