全フットボール指導者に伝えたい、育成年代における“フットサル”のあり方(鳥丸太作/戸塚FCジュニア アドバイザー)【バーモントカップインタビュー】
フットサルを通して「思考レベル」を向上させる
──鳥丸さんが育成年代の指導で心がけていることはありますか? 一番は、人としてどうあるべきかという部分です。選手たちにとって小学校卒業後にJリーグの下部組織に行くかそうでないかという進路は重要な選択だと思いますが、僕ら指導者はそこまで重きを置くことではありません。 それよりも、仲間を思いやり、対戦相手をリスペクトし、周りの人に感謝の気持ちをもつこと。そういう選手になれるように子どもたちに関わることが一番大事だと思います。その上で競技レベルを上げていくこと。逆に言えば、そこの部分がしっかりしないと競技レベルは上がっていかないと思っています。 ──戸塚FCジュニアの選手たちには、長い選手だと8年近くフットサルを教えています。フットサルをやることでどんな力が身につくのでしょうか? 一つの目標に向かって考え、努力していくことを習慣づけるのに、フットサルはすごく向いていると感じています。プレーする際に考えることが多く、その思考を体現する瞬発力も必要です。それを繰り返して思考レベルを上げていくことで、物事や人のことを深く考えられるようになり、成長につながると僕は思っています。 工夫して勝つ方法を考えることは思考レベルを上げるためにも大事ですし、自分の頭で考えてプレーすることが、彼らのこの先の将来、サッカーやフットサルだけでなく、仕事や私生活においても大きな影響を与えると思います。 ──フットサルに長年取り組んできた選手たちがバーモントカップで優勝しました。これまでの取り組みを通して育成年代の指導者に伝えたいことはありますか? 今回の結果を受けて、改めて育成年代からフットサルに取り組む意義を感じています。バーモントカップは、個人戦術やグループ戦術、どのように数的同数から数的優位をつくり、スペースを活用するのかといったことを勉強する場にできると思います。僕らの取り組みがすべて正しいと言うつもりはないですが、僕自身が感じているフットサルの価値を伝えていくためにも、その道筋を示したいと思ってここまでやってきました。 頭を使ってプレーできない選手は、上のカテゴリーでは通用しません。また、自分で考える力は競技以外にも必要ですから、育成年代のうちに身につけておかないのはもったいないと思います。1対1のスキルや対人のデュエルはもちろん大事ですが、ただボールを前線に蹴り込んで事故を狙うようなプレーは、日本のフットボールの未来を考えてもあまり意味がないと感じます。ロングボール戦術は一つの形ですし、自分たちも活用しますが、適度な使い方が大事ではないでしょうか。 ──バーモントカップの2週間前に行われた高校生の大会、JFA 全日本U-18フットサル選手権大会では、同じようにサッカーチームとフットサルチームが出場して、フウガドールすみだファルコンズが優勝しました。この世代は徐々にフットサルのレベルが上がってきていると考えられるのでしょうか? それはあると思います。フウガドールすみだファルコンズは小倉(勇)監督が2連覇を達成しています。連続して優勝するということは、いい指導ができているということ。フットサルの専門的な視点をもった指導者をチームに配置できているからこその結果だと思います。フットサルの技術や戦術を取り入れた上で大会に出場することが、フットボール界全体の競技力向上につながる。これは小学生の大会でも同じことが言えると思います。 ──今後、この大会がより子どもたちの成長につながっていくために、どのようなことが必要でしょうか? 「フットサルの大会」として価値を上げていくためにも、ゴールの大きさを変えることは必要だと感じています。コートサイズは通常よりも小さいですが、ゴールが大人と同じ大きさのものを使っている状況では、“ただ蹴り込むだけ”でも点が取れてしまいます。 このような戦術が子どもたちの成長に意味があるのかを考えると疑問はありますし、個人的には、大会のルールなど環境面を整備する必要性を感じています。 素晴らしい会場で、たくさんの応援があるなかでプレーする。そういった大会の場を用意してもらえることを本当にありがたく感じています。だからこそより良い形にしていけるように、現場の僕らが声を挙げていかなきゃいけないとも思います。選手の成長を考えて「こうしたほうがいいのでは」と伝えていきたい。現場と運営が手を取り合うことで、より良い育成年代の大会をつくっていけるのではないかと考えています。
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