全フットボール指導者に伝えたい、育成年代における“フットサル”のあり方(鳥丸太作/戸塚FCジュニア アドバイザー)【バーモントカップインタビュー】
小学生年代のフットサル日本一を決める大会「JFA バーモントカップ第34回全日本フットサル選手権大会」で、初出場にして優勝を飾ったのが戸塚FCジュニアだ。Fリーグの監督経験をもつ鳥丸太作氏が関わるチームとして戦前から注目を集めてきたなか、初戦で敗れる“波瀾”スタートから這い上がり、頂点までたどり着いた。 初戦を終えた直後、鳥丸氏は言葉を選びながら今大会のあり方について疑問を口にしていた。 「コートサイズは通常より小さいのに、ゴールのサイズが大人と同じものを使っている状況は厳しい……」 これまで、バーモントカップをめぐる育成年代の“フットサル大会”には、数多くの議論が生まれてきた。「フットサルはサッカーに生きる」と言われて久しいなかでも、今大会で繰り広げられる“フットサル”は、それこそFリーグのそれとは似て非なるものであり、“GKのスローはハーフラインを超えてはいけない”というルールが生まれる以前は、GKのスローを相手GKがキャッチするゴール前への“投げ合い”が横行した時代もあった。 近年も、フィジカルやサイズ感に恵まれる選手を前線に配置し、自陣からゴール前に蹴り込んで得点を狙う形が“常套戦術”として用いられ、DFやGKが対応しきれないままゴールネットが揺らされる現象が多発していた。 ルールに反していない限り、異を唱えても、根底から変えることは簡単ではない。「勝利」という目的を考えれば、ゴールを奪う手段として、ゴールにより近い位置にボールを送り込む行為は間違っていない。だが、フットボールの原理原則を落とし込むべき年代で、フットサルの価値を体感するべき年代で、その戦いは正しいのか──。 これまで、いくつもの“フットサルチーム”が“投げ合い”や“蹴り合い”に屈し、涙を飲んできた。フットサルを学び、仲間や相手との駆け引きのなかで頭を使い、判断・決断して技術を発揮するチームが、なかなか勝ち上がれない現状があった。「そのやり方でいいのか」と訴えたくても、勝てていなければ、その声は虚しく響くだけだった。 その意味で戸塚FCジュニアの優勝は、育成年代に一石を投じる結果を残したと言える。 所属選手の多くは、鳥丸氏が代表を務める「RAD FUTSAL PROJECT」で始まったチームで、幼稚園や小学校低学年の頃からフットサルを学んできた。そして、サッカーのフィールドでもその技術・戦術を発揮できることを証明してきたなかで今回、自分たちが積み重ねてきた“フットボール”で、フットサル日本一をつかみ取ったのだ。 鳥丸氏のインタビューを通して伝えたいのは、改めて「フットサルはサッカーにも生きる」ということよりも、「フットボールの原理原則をきちんと学べば、サッカーでもフットサルでも成果を出せる」ということだ。 「フットサルの価値を伝えていくために、道筋を示したいと思ってやってきた」 優勝直後、鳥丸氏はそう強く口にした。その言葉は、特に育成年代のフットボール指導者に伝えたいメッセージだ。バーモントカップの戦いを通して、育成年代におけるフットサルのあり方を考えるきっかけになればと願う。 取材=伊藤千梅 編集=本田好伸
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