健康診断もすり抜けあらゆる病気のリスクに! 「血糖値スパイク」を防ぐ2つの予防策
「カーボとは炭水化物のこと。つまり、ご飯を最後に食べる食事法です。実は、食物繊維と同じように、タンパク質と脂質も、先に食べることで、糖の吸収を遅らせることがわかっています。 そしてタンパク質は『GLP-1』も分泌させます。このホルモンはインスリン分泌を促すので、血糖値の抑制に貢献します。さらにGLP-1は満腹感を得たり、食欲抑制の働きもあるので一石二鳥。つまり野菜だけでなく、おかずを先に食べることで、糖が吸収される時間を延ばし、血糖値の最大値も抑えられるのです」 外で昼食を取ることが多い人は、会社を出る前にタンパク質や脂質を多く含むものを食べるといいという。 「例えばタンパク質が豊富なチーズや豆乳などを、食事に行く前に会社で食べておくことで、炭水化物を摂取するまでの猶予を長くできます。一番のオススメはサバの味噌煮缶です。サバはタンパク質が多いだけでなく、DHAなどの栄養素も豊富。発酵食品である味噌には血糖値を下げる効果があります」 ちなみに噛むこと、つまり咀嚼(そしゃく)自体にインスリンを分泌させる作用があるという研究報告もある。食事前に炭水化物以外のものを少しでも食べれば、血糖値上昇の抑制につながる可能性もあるようだ。 さらに、食事の後にも血糖値スパイクを防ぐ方法はあると泰江院長は話す。 「食後すぐに運動することです。運動といっても歩く、階段を上る、それくらいでいい。10回程度、ゆっくりスクワットするなんて最高です。大事なのは、食事から間を空けないことと座らないことの2点。食後に喫茶店で休んだり、ゴロゴロするのはNGです。ましてや仕事をしながら食事をして、そのまま仕事を続けるのは最悪です。医者もやりがちですが(苦笑)。 血糖値は食べ始めて10~15分で上がります。食後30分もたてば、人によってはピークを過ぎてしまい、間に合いません。血糖値が上がりきる前に筋肉を動かすことが大切です。筋肉に貯蔵された糖を消費することで、再び筋肉が血液中の糖を取り込んで、血糖値を下げるというわけです。1、2回やったところですぐには変わりませんが、続けることで効果が出ます」 会社に戻るときに、遠回りしたり、少し遠いコンビニに立ち寄るだけでも十分だ。家にいるなら、洗い物などの家事をするのもいい。 「本来は、やや速めに歩くウオーキングなど軽中度の運動を日常的に取り入れるのが理想です。筋肉を動かしておくことで、持続的な効果があり、日頃の血糖値も下がりますから。 ですが、まずは食事の直後に少しでも動くことから始めてください。カーボラストもそうですが、こうした習慣を早めに取り入れることが大事です。現在40代の方が60歳まで血糖値スパイクを防いだり、血糖値を低く保つことで、『レガシーエフェクト』(遺産効果)が効いてきます。今、ライフスタイルを変えることで、将来もし糖尿病になっても、合併症リスクや死亡リスクが低下するのです」 自覚症状のないうちに、ずるずると大病へと引き込む血糖値スパイク。もし今、夏バテかなと感じたら、気をつけてほしい。 取材・文/鯨井隆正 イラスト/服部元信