遺言書を見つけたら、開封したらダメ…相続人が知っておきたい遺言書の基礎知識と、取り扱い方法【相続専門税理士が解説】
ルールを守らないと「無効」になってしまうケース
「自筆証書遺言」は、自分ひとりで作成でき、手軽ではありますが、ルールを守らないと無効になってしまうため要注意です。 自筆証書遺言は、パソコンで作って印刷したものや、音声を録音したものは無効です。日付が書かれていないもの、印鑑がないものも無効です。ただし、財産目録(不動産、預貯金、有価証券等のリスト)だけは、パソコンで作って印刷してもよいとされています。 「公正証書遺言」は、公証人が作成してくれるため、遺言の内容を公証人に口頭で話すだけで作成できます。また、作成した遺言書は公証役場で保管され、無効になることもありません。 公証人に依頼する際の費用は、遺言の対象となる財産の大きさによって変わりますが、公証人の手数料は3万円~5万円程度です。場合によっては、追加の手数料が発生することもありますが、10万円を超えることはあまりありません。ただし、病気などで公証役場に行けず、公証人に来てもらうときは、2万円程度の報酬と交通費を支払う必要があります。
遺言書の内容と実際の財産に齟齬がないか
遺言に書かれた内容と実際の財産に、齟齬があるケースもあります。遺言に一部の財産についての言及しかない場合、書かれていない財産については、相続人全員で話し合い、分割を決めることになります。 また、遺言の内容ついて、相続人全員が納得していないときは、遺言に従わず、話し合いで決めることも可能です。しかし、相続人の1人が納得できなかったとしても、ほかの相続人が納得していれば、文句はいえません。 ただし、遺留分を侵害されていた場合は、侵害された相続人が、多くもらった相続人に対し、不足分を請求することができます。その場合は書面で「遺留分侵害請求」の通知を行いますが、通常は内容証明郵便で送付します。それにより、侵害された遺留分に相当するお金を支払ってもらいます。ただし、相続開始を知ったときから1年以内に送らなければなりません。 もしそれで支払われない場合は、家庭裁判所で調停を行い、侵害された金額に相当するお金を請求します。それでも合意できない場合は、訴訟へ進むことになります。 岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
岸田 康雄