わが子が発達障害かもしれないと思ったら、本人に伝えたほうがいい? 専門家が疑問に回答
小学校に入学後、「忘れ物が多すぎる」「集中力が途切れる」「友人とのトラブルが多い」など、親がわが子を「発達障害かもしれない」と心配するケースが増えています。発達障害が気になったらまずは知っておきたいことを、児童精神科医の吉川徹先生に聞きました。子育て情報誌「AERA with Kids」から紹介します。 【図】ADHD、ASD、LDの子の特性はこちら(全3ページ) ■「苦手」を理解すれば解決方法を探せる 集団生活が苦手だったり、授業中に落ち着きがないと先生に指摘されたり、友達とのケンカが続いてかんしゃくを起こしたり……。小さな集団で手厚く見守られていた幼稚園・保育園時代には目立たなかった「困りごと」が、小学校に入った途端に見えてくることがあります。 「たとえば、ADHD傾向がある子が45分の授業をじっと座っているのは本当に大変なことです」というのは吉川徹先生。 「慣れない学校生活に適応しようと子どもは想像以上に頑張って、人一倍疲れているかもしれません。親御さんは、お子さんの様子にしっかり目を向けてあげてくださいね」 確定的な診断がついていない「グレーゾーン」の子の場合も注意が必要。忘れ物が多い、場の雰囲気を感じるのが苦手などの問題が学校生活の中で際立つことも。 「『苦手なことが多いから、自分はダメな子』と感じてしまうのは一番避けたいこと。何が苦手かを理解すれば、解決方法を探すことができます。忘れ物をなくすのではなく、忘れたらどうやって乗り切るかを考える。ケンカをしたらどうやって仲直りできるかな、というふうに親子で一緒に考えてあげてください」 ■特性に気づいたら本人にも伝えて応援を 発達障害やその傾向があることを、本人にいつ、どのように伝えるかどうかは悩むもの。吉川先生は、本人にはできるだけ早く特性を伝えたほうがいいと言います。
「最初から診断名を伝える必要は、まったくありません。むしろ得意、不得意は何か、どんなお手伝いがあるとうれしいかなど、自分の扱い方を知ってもらうことが大切です」 その上で、ある程度理解できる年齢になったら「ADHD」「自閉スペクトラム症」といったキーワードを伝えておく。そうすることで、その後の人生においても、適切な支援にたどり着きやすくなると吉川先生。 「親が子どもより長生きをして、助け続けるのは、実際は難しい。だったら大人になったときに、自分で周りにサポートを求められるようにする道筋を作ってあげるのが、親にできる最善のことではないでしょうか。まずは自身の特性を知ってもらって、自分はそのままでいいとわかってもらうこと。そこから、どう困難に対処するのか工夫していくことを応援してあげてくださいね」 1. どこに相談する? まずは学校や園の先生と連携をとる 小学校には、児童や親の困りごとに向き合ってくれる専門機関との連携があります。まずは担任に相談し、スクールカウンセラーや特別支援教育コーディネーターにつないでもらったり、教育委員会の相談窓口を紹介してもらったりするとスムーズ。または市区町村の行政窓口から、育児支援担当者や児童相談所などにつながることも可能です。医療機関の受診についてもスクールカウンセラーやソーシャルワーカーに紹介してもらうと安心。 2. 受診する? しない? 受診するメリットや大変なことを知っておく 発達障害の有無を確定できるのは医療機関のみ。主に小児科や児童精神科での診断により発達障害の有無や種類が明確になります。確定診断に至らない場合は「グレーゾーン」と言われることも。いずれにしても特性に応じた支援が受けやすくなることが受診の最大のメリット。ただ、一度医療機関にかかると継続しての受診が必要になることもあり、通院の手間や時間、お金などがかかるので覚悟は必要。