オードリー・タンが「本当に困っています」と助けを求めた「意外な相手」…万能ではないリーダーに必要なもの
リモートワークが進んだことによって目が行き届かなくなり、部下の管理が難しくなったと嘆いていないだろうか? だが、台湾のデジタル担当大臣にも抜擢された「若き天才」オードリー・タンは、そんな伝統的な垂直型管理ではなくメンバーを監視しないフラットな「水平型管理」を推奨している。 【写真】日本人が知らない「台湾のリアル」…天才オードリー・タンはこうして目覚めた 前編記事〈オードリー・タンは決してチームメンバーに「命令」しない…自ら考えて動く組織をつくる「リーダーの条件」〉でも紹介した「水平型管理」とリーダーのあり方について、ひきつづき解説する。 ※本記事は、『オードリー・タン 私はこう思考する』(かんき出版)を再構成・再編集したものです。
リーダーに高い問題解決能力は必要ない
水平型管理で、万一、納期に遅れるといった事態が起きたときはどうするのか? オードリーは笑って答える。「もちろんリーダーである私が責任を負います。最終的に責任をとることがリーダーの仕事ですから」 とはいえ、いくらリーダーでもすべてのリスクを回避できるとは限らない。どうすればいいのか。 たとえば、パンデミック対策で政府がマスク実名制を導入したときのことを挙げる。当初、薬局では番号札を発行してマスク販売を管理しており、政府のマスクマップのデータと実際の数量に食い違いが生じてしまっていた。 どうすれば問題を解決できるか悩んだオードリーは、直接薬局に出向いて薬剤師に話を聞いた。「本当に困っています。もしあなたがオードリー・タンならどうしますか?」 ネット上でも多くの薬剤師の意見を集め、対策を検討した。最終的に、薬剤師が番号札を発行してキーを押したら、その枚数がマスクマップから引かれるシステムを作り、問題は解決した。 リーダーは決して万能ではない。必ずしも問題解決能力が高い必要はない。何か問題が起きたら、それは組織全体で対処すべき問題なのだから、すぐに公開してみんなで意見を出し合えばいい。問題を解決するのが誰であっても構わないのだ。リーダーに求められるのは、体面にこだわらない柔軟さと折れない心だ。 リーダーが勇気を持って余計なプライドと権力を手放し、「共創」を呼びかけることで、チームの主体的なクリエイティビティが発揮され、企業の成長が長く続くことになる。