オードリー・タンが「本当に困っています」と助けを求めた「意外な相手」…万能ではないリーダーに必要なもの
自分なりの経験をメンバー同士で共有させる
新しく職場に入ってきたばかりの社員は、やる気に満ちていて主体性が高い。重要なのは、彼らをいかに管理するかではなく、その主体性をいかに組織のなかで消耗させることなく維持させるかだ。 そのためには、自分なりの経験をメンバー同士で互いに共有させる。最初から他人の経験を受け入れる必要はない。ある程度の時間をかけ、じっくり話を聞くなり実際に現場に足を運ぶなりして、広い心で相手の視点に立って物事を見てみる。 そうするうちに、組織のメンバーの心に、貢献し続けることへの納得感が生まれる。この感覚がなければ、「ここで無駄な時間を過ごす必要はない」と転職を考えたくなるものだ。 オードリーのオフィスで働くチームのメンバーは、さまざまな部門から集まったエキスパートたちなので、任務を果たしたあとはそれぞれもとの職場へ戻っていく。 オードリーの望みは、異なる部門から集まった人たちがおのおのの価値観や手法を共有し合い、互いに共通の価値観を見つけ出して、イノベーションの手法を通じてそれを実践していってくれることだ。 メンバーたちが将来もとの職場へ戻ったときに、持ち帰った種を植えるように、共通の価値観を広め、デジタル化された働き方を活用してくれれば、コミュニケーションの効率は上がり、経費も節約できる。 部門間の意思疎通が必要なときは、わざわざ高速鉄道に乗って会議に出かけなくても、バーチャル空間で会議をすれば半分の労力で倍の成果を挙げられる。
これからの時代は水平型管理しかありえない
水平型の管理方式は、イノベーションと主体的に目標を定める積極性をチームにもたらす。 最大の課題は、一般的な企業はこうした管理方式に慣れていないことだ。特に製造業的な考え方の人の目には「ルーズで締めつけの弱い管理方式」と映り、本当に期限内に納品されるのかと不安になるかもしれない。 これまで、水平型管理を導入する企業はベンチャー企業やソフトウェアメーカーなどが大半だった。しかし、パンデミックによってリモートワークへの転換が進んだことで、管理者たちはこの大きな社会的変化への対応をせざるを得なくなった。 社員たちがリモートワークになり、それぞれ自宅からオンライン会議に参加する状況では、上司はパソコンスクリーン上に映るウインドウの一つにすぎない。その横でどんなウインドウが開かれているか、上司には知る術がない。 ならば、水平型管理を導入して社員に自らを管理させるしか、選択の余地はないのだ。
オードリー・タン(元 台湾デジタル担当政務委員)