40歳・平幕玉鷲、誕生日に4勝目「自分にお祝い」 立ち合いも信条の「頭から」/九州場所
大相撲九州場所7日目(16日、福岡国際センター)現役関取最年長の東前頭11枚目玉鷲が、40歳の誕生日の土俵で翠富士(28)を押し倒して4勝目。白星を先行させた。大関陣は新大関大の里(24)が宇良(32)を押し出し、連敗を免れて5勝目。豊昇龍(25)は阿炎(30)に引き落とされて初黒星を喫し、琴桜(26)は熱海富士(22)を上手投げで破って1敗を守った。全勝が消えて1敗に琴桜、豊昇龍、平幕の隆の勝(30)、阿武剋(24)の4人。 したたかさと若々しさが同居する。この日は40歳の誕生日。2度の優勝経験がある玉鷲が「不惑」の土俵を白星で飾った。 「自分にお祝い。落ち着いてよく動けてよかった」 立ち合い。左へ変化した翠富士の動きを老かいに見切っていた。慌てずに右喉輪攻め。締め上げてねじるように押し倒し。活気あふれる攻撃に「若々しい相撲を取っていると言われるのが一番うれしい」と誇った。 昭和以降、40歳を超えて幕内の土俵に立ったのはこれまでわずか5人。元大関能代潟、元幕内藤ノ里、元関脇旭天鵬(現大島親方)、元関脇大潮、元大関名寄岩。いずれも四つ相撲もしくは差しても相撲を取れる力士で、突き押しに徹する玉鷲の存在は際立つ。「20年間頭から当たってきた。40歳でも(立ち合いは)頭から当たる」。 朝稽古も休まない。「やらないと自信が湧いてこない。玉鷲らしい相撲をみてもらいたいから。前へ出る気持ちを…」。9月の秋場所中には初土俵から休まず土俵へ立ち続ける通算連続出場記録の首位に立ったばかり。「鉄人」の心技体に陰りは見えない。 手芸やケーキづくりが得意で手先は器用だが、師匠の片男波親方(元関脇玉春日)は「相撲は不器用。押すことしかできないことで迷いがない。逆にそれが長続きにつながっている」とした。 中国の思想家、孔子は「論語」で男性の15歳から70歳まで、年代の思想理念を6つに記した。「三十にして立つ」「四十にして惑はず」「五十にして天命を知る」。玉鷲は「人間なので(不惑とは)感じない。迷うこともある。新しく化けてもっと強くなりたい。まだ成長中」。天命を知るまで。旅は続く。(奥村展也) ■40歳10カ月まで土俵に立った大島親方「記録は乗り越えられるもの」
40歳10カ月まで土俵に立ったモンゴル出身の先輩でもある大島親方(元関脇旭天鵬)は「10カ月なんてすぐ。早いよ」と、玉鷲がさらに記録を伸ばす勢いを感じている。玉鷲が令和4年秋場所、37歳10カ月で2度目の優勝を果たしたとき、同親方が持っていた昭和以降最年長の優勝記録(37歳8カ月)を更新された。「記録は乗り越えられるものだから」とエールを送った。