「一日一食と聞けば自分も一食に」谷川俊太郎を追い続けた詩人・藤川幸之助が語る忘れられない言葉
繋がった「縁」。2人の詩人の出会い。共著出版以来、谷川さんは藤川さんの詩集の帯にも、言葉をおくってくれるようになった。 『まなざしかいご 認知症の母と言葉をこえて向かいあうとき』(中央法規、2010年) ー愛と苦しみから 生まれた 言葉なき「まなざし」こそ、 詩の源。 そこには 深い知恵が ひそんでいる。ー 『支える側が支えられ 生かされていく』(致知出版、2020年) ー「混沌を生きる母のいのち 愛を貫いた父のいのち 詩で立ち向かう息子のいのち それぞれのいのちが愛おしい」ー ■谷川さんが書いた藤川幸之助 藤川さんが、谷川さんの『僕はこうやって詩を書いてきた 谷川俊太郎、詩と人生を語る』(ナナロク社、2010年)を読んでいた時のことだ。 藤川さん: 「『藤川幸之助さんという方なんですけど…』と僕のことが書いてあったんです!『現実に基礎をおいた詩は強いなと感じました』というような内容で…。もうびっくりしました」 「その頃の僕は『人をびっくりさせるようなものを書きたい』、『芸術的なものを書きたい』ともがいていました。でもそれを読んで決まりました。『このまま自分の生きる姿を書いていこう』。それはつまり『谷川さんの一部分を引き継ぐことだ』と」 ■僕のお手本、谷川さんの「じゃあねえ」 認知症の母親を2012年に亡くすまで、介護をしながら、感じたことを詩に書いてきた藤川さん。母親が生きていたころ、谷川さんに言われた忘れられないことばがある。 藤川さん: 「谷川さんは僕に「お母さんが亡くなられた後、藤川さんがどんな詩を書くのか楽しみだな」と言いました」 「僕にとってそれはとてもプレッシャーでした。でも結局僕は母が亡くなった後も変わらなかった。『生活に根づいたことば』を、ずっと書き続けているんですよね」 「それからもう一つ。これを思い出すと泣きたくなるんですけど…。谷川さんは電話を切る時いつも『じゃあねえ』って言うんです。その『じゃあねえ』にこもっている親しみといったら…。僕もこんな風に言いたいなと思わされました。あの『じゃあねえ』は、僕にとってお手本ですね」