「10年で国内ナンバーワンに」 三井住友FGの中島社長が語る変革の勝算
太田純・前社長は、現状に安住している銀行に警鐘を鳴らすため「カラを、破ろう。」というスローガンを掲げた。 【関連画像】アジアで提携した金融機関のトップと三井住友FG経営陣(後列の左から3人目が中島達社長)(写真=三井住友FG提供) その結果、固定観念や前例、組織の論理にとらわれない社員が増え、デジタル子会社の設立など良い流れは確かに生まれている。しかしグループ全体で見ると、健全な危機感や変革の意欲はまだ局所的だ。 5~6年前はよく「銀行に将来はない」と言われた。だが、足元の好調な業績により、最近の金融業界は再び安心感に包まれているのではないか。だから私は、変革を実行に移す一歩を踏み出すことを社員に求めて「突き抜ける勇気。」を新たなスローガンに定めた。 ●法人もOliveのように攻める 三井住友フィナンシャルグループ(FG)の強みは、グループ各社の複合力の高さにある。その結晶が「Olive(オリーブ)」だった。グループ内外の多様な商品やサービスを利用してもらい、粘着性の高い低コスト預金の増強につながっている。この成功体験を生かし、中堅・中小の法人向けに決済性資金を集めるプラットフォームを開発中だ。 コンセプトはオリーブと同じで、良いものであればグループの外からもサービスを取り込む。銀行とクレジットカードの決済をパッケージで提供し、経理や経費の処理まで簡素化したい。これまでの法人取引はリアルとデジタルのハイブリッドモデルだったが、スタートアップを中心にオンラインですべて完結させたいニーズが増えている。事務負担の軽減は企業の生産性向上に直結し、日本の再成長にもつながっていくだろう。 まずは国内事業の強化に注力するつもりだ。リテールや中堅・中小企業取引は現時点で国内トップと言える。大企業との取引でも、現在の3メガバンクグループ体制になった直後の融資額は三菱UFJFGやみずほFGに水をあけられていたが、今は拮抗している。ここがさらに強くなれば、10年はかかるかもしれないが、間違いなくナンバーワンの金融機関になれる。 大企業は脱炭素やデジタル化、PBR(株価純資産倍率)向上といった課題を解決するため、注力分野への投資や不採算事業の整理を進めている。もちろんメインバンクの切り替えは簡単ではないが、最近は個別の案件ごとに良いサービスを選ぶ傾向があるため、食い込む余地はある。 成功の鍵はSMBC日興証券が握っていると考えている。相場操縦という不祥事でブレーキがかかる形になった銀行との連携を、再び加速する。そこにカードやリース、信託なども合わせた総力戦で臨む。 2024年3月期の連結純利益は、中期経営計画で掲げた26年3月期の目標である9000億円を上回り、過去最高益になる見通しだ。これから円高が進んだり米金利が低下したりすれば外部環境としては逆風だが、継続して1兆円を計上できる経営基盤を構築したい。