発災10時間後には最初のお産も―恵寿総合病院が能登半島地震後も医療を継続できたワケ
◇非常時の事業継続計画
我々は事前にBCM(事業継続マネジメント)*/BCP(事業継続計画)**をつくり、非常時でも医療を継続できるよう計画を立てていました(別表)。今回はそれが全て生きました。 3月1日まで水道は止まっていたので、2カ月間は井戸水で乗り切りました。電気は2カ所の変電所から受電するようにしたうえで、両方が途絶えても自家発電装置があり、さらにバックアップとして無停電電源(蓄電池)も備えていました。今回、発災時に1系統の受電が途絶えたのですが、すぐに別の変電所に切り替わったので自家発電装置の出番はありませんでした。 私たちの老人保健施設に福祉避難所を作れるように準備しておいたことも生きました。普段なら救急対応で治療後に自宅に戻ってもらうような高齢者も、災害時には帰宅できません。福祉避難所として40床を確保して、そのような方に使ってもらいました。 ICT/DXでは業務用iPhoneが威力を発揮しました。発災後に病棟編成を大きく変えたのですが、混乱なく対応できたのはiPhoneだけでカルテの閲覧・記載ができるようにしておいたことが大きかったのです。 免震構造の本館は無事だった一方、産科病棟などが入る3病棟と回復期リハビリテーション病棟などが入る5病棟は耐震構造だったので、建物は損壊を免れましたが棚がひっくり返ったり天井が落ちたり水道管が破裂したりといった被害が出ました。そのため、病床を再編成して両病棟の入院患者さん113人には1月1日に本館に移っていただきました。また、新たな患者さんも本館に収容し、キャパシティー以上の患者さんを受け入れていました。それでは療養環境が悪いので5病棟の仮復旧を急ぎ、1月11日には病床を確保できたためキャパシティーオーバーの状態を解消しました。そうした病棟の移動でも、業務用iPhoneがあったから混乱なく診療が続けられました。 * BCM(事業継続マネジメント):Business Continuity Management=大規模な災害などの際にも被害を最小限に抑え事業が中断しない、中断しても早急に復旧できるためのマネジメント活動。 ** BCP(事業継続計画):Business Continuity Plan=大規模災害時などにも事業を継続、あるいは早期復旧のための方針や手順を示した具体的な計画。