『虎に翼』制作統括インタビュー。出産場面や玉音放送を描かなかった理由、憲法のシーンに込められたもの
尾野真千子によるナレーションの力
―この作品の特徴として、尾野真千子さんの語りの使い方が従来の朝ドラと違うという点があると思います。寅子のモノローグまで代弁しており、ナレーションをそういうかたちにした経緯や尾野さんの起用理由などを教えてください。 尾崎:吉田さんが書かれてきた初稿にこの語りが書いてあって、これはすごいナレーションだなと最初読んだときに思いました。 このドラマの語りの特徴として、結構シリアスな場面でも、寅子の気持ちがスッと入ることでちょっとコメディというか、客観的に引いて見られて面白くなるように効果的に配置されていると思います。ツッコミであったり、ちょっと笑えたりする語りが入ることで、ポップにテンポよくしたいという意図もあり、うまくいっているなと思います。 ただ、台本ができていくなかで、このナレーションは難易度が高いということをチーム内でも話していました。しっかりお芝居ができる方にお願いしないと成立しないんじゃないかといろいろ考えた末に、尾野真千子さんにお願いしました。 尾野さんとしても、寅子のモノローグ的な気持ちも喋るナレーションということもあり、はじめは不安というか、どういうふうにやっていったらいいのか考えられていたみたいです。でも私たちとしては、最初の収録時のナレーションが本当に素晴らしかったので、「これはいける、すごい語りになるね」となったのは覚えています。 ―最後の質問ですが、第10週以降はどのように描いていこうと考えていますか? 尾崎:ドラマの新しいスタートになる「裁判官編」と考えています。新しい日本国憲法が世に出て、寅子が新しいスタートを切る。職場のなかで寅子がどう戦っていくかが描かれていきます。 本格的に法律に向き合う仕事になり、沢村一樹さんや滝藤賢一さんなどの新しい法曹界の面々が登場するのですが、その人たちとどう対峙してどう乗り越えていくかということがまずは見どころになるかと思います。
テキスト by 生田綾