コンビニの食品ロス問題 業界の商習慣や会計ルールも要因 廃棄「ゼロ」へ新たな一歩
材料や流通を自前に 臨機応変に無駄なくすセコマ
北海道を中心に約1200店を展開するセコマ(本社・札幌市)は独自のやり方でロスを減らしている。札幌市のセイコーマート南7条店を訪れた。 作りたてが人気のホットシェフのコーナーには、専門の調理員が店内で作ったおにぎりやかつ丼などが並ぶ。天候など状況に合わせて作る数を調整し、売れ残りをできるだけ減らしている。 総菜コーナーでは焼き鳥の近くに「チキンたっぷりペペロンチーノ」が売られていた。焼き鳥の肉をカットして余った肉をペペロンチーノで使い、無駄をなくす。規格外メロンで作られている「北海道メロンソフト」、規格外の「曲がりキュウリ」5本298円も売られていた。 農場、製造工場、流通を自前でそろえることで、それを可能にしている。天候により予想以上に収穫されたり、規格外だったりする自社農場で作った野菜を使った商品を臨機応変に企画し、自社工場で作って販売することで廃棄を減らす。総菜を製造するグループ会社の北燦(ほくさん)食品本社工場(札幌市)を訪れると、煮卵をつくる過程で崩れたゆで卵でエッグサンド用の具材が作られていた。 セコマは全国展開の大手コンビニに比べてフランチャイズ店が少なく、8割が直営店だ。店舗のオーナーの高齢化と後継者不足で直営化を進めている。フランチャイズ店でも本社に払う店側のロイヤルティーは粗利益の10%と他に比べて低い。 執行役員の佐々木威知さんは「3分の1ルールもコンビニ会計もセコマにはない。食材を無駄なく使うのは、商品をいかに安く提供するかという発想から生まれた。廃棄されるはずだった食材を別の商品に使えば、廃棄費用と食材費と二重に費用を抑えられる。店舗で廃棄を抑えれば、会社全体の利益に直結する」と話す。
AIで販売数予測 食品ロス「ゼロ」めざすローソン
未来のコンビニはどうあるべきかの模索が続く。ローソンが環境に配慮した店づくりを目指した実験店「グリーンローソン」(東京都豊島区)を訪れた。ローソンは2050年までに食品ロス「ゼロ」を目指している。 店には商品の棚への補充や、弁当や総菜などを店内調理する店員1人しかいない。会計はすべてセルフレジで、関西の自宅からリモートワークでアバター店員が対応する。商品は他店に比べて冷凍食品が多く、実験商品も置かれている。東京都内10店舗で販売する、とんかつサンドなどの冷凍調理パンが売られていた(11月で販売終了)。ふつう調理パンの消費期限は2日ほどだが、冷凍は賞味期限が3カ月と長く廃棄を減らせる。これまでも冷凍のおにぎりや弁当などを販売してきた。売れ行きや客の評判などの情報をふまえて改良を重ねるという。 バックヤードに置かれた冷凍庫には、人気商品「からあげクン」が入っていた。消費期限が近い商品を凍らせて期限を延ばし、子ども食堂などに無償で提供している。からあげクンは子ども食堂で「かつ煮」や「酢鶏」などに再利用されている。 食品廃棄を減らすために、ローソンが特に力を入れているのがAIを使って弁当やおにぎりなどを発注するシステムだ。今年7月までに全店舗に導入した。天候や過去の販売実績、立地などが似た店舗の売れ行きなどのデータを加味し、最適な発注数を各店に示す。それをもとに、店側が発注数を決める。商品が売れ残らないようにするため、どのタイミングで値引きしたらよいかも示す。 昨年度、ローソンの食品と店内調理の揚げ物に使った油の廃棄量は、1店舗あたり1日平均10.2キロ。コロナ禍収束後に微増している。 SDGs推進室長の鈴木一十三さんは「目標の達成にはリデュース(削減)、リユース(再利用)、リサイクル(再生利用)があるが、とくにリデュースをやっていく。適正発注や見切り品の値引きをすすめ、(消費期限の近い商品から購入してもらう)『てまえどり』などお客様の協力も得ながら削減を目指す」と話す。
朝日新聞社