コロナ禍でも大活躍! 自衛隊が「台風・地震」以外でも柔軟に行動できる根本理由
災害派遣で重用される理由
では、どうして自衛隊は災害派遣で重用されるのだろうか。 その理由のひとつは「機動力」だろう。自衛隊は輸送機から輸送艦まで、緊急展開するための輸送手段を持っている。災害はいつどこで起こるかわからない。能登半島地震のように高速道路などのインフラが寸断され、港も破損しているという場合もあり得る。 こうしたときでも、自衛隊ならば対応可能だ。輸送艦を桟橋につけても構わないし、それが不可能であったならば、着上陸作戦を想定して輸送艦に搭載されているエアクッション型揚陸艇(LCAC)を使えば、砂浜にも揚陸可能だ。もちろん、ヘリコプターでの輸送も可能だ。こうした手段は警察や消防は持ち合わせていない。むしろ、緊急展開の際には自衛隊に協力を仰ぐという場面も出てくるだろう。 もうひとつの理由は「マンパワー」だ。警察や消防も全国規模で考えると、自衛隊と遜色のない人員が配置されている。しかし、彼らのすべてを被災地域に投入することはできない。日常的に犯罪は起こっているし、火事も起こっている。彼らには地域の安全を守る義務がある。 一方、自衛隊は国土防衛のための人員を除けば、多くの人数を被災地域に投入することができる。これは警察・消防とは異なる。また、輸送機材だけでなく、ブルドーザーなど災害復旧に必要な機材もそろっている。そのため、自衛隊は被災地域に投入しやすい。 最後は指揮命令系統の問題だ。被災地域における救助、救援の指揮をとるのは誰だろうか。意外に思うかもしれないが、 「その自治体の長」 となる。実は災害対策基本法では、災害救援においては、まずはその地域の基礎自治体(市町村)が行うとされており、都道府県や国はその調整を行うとされている。 警察や消防は都道府県ごと、市町村ごとに独自の命令系統がある。元々、地域の安全を守るための組織であるから、その方が合理的だろう。しかし、大規模災害となると話が違う。各地から集結する警察や消防をまとめ上げる必要がある。 一方、自衛隊の場合は最初から指揮命令系統は一貫しており、各部隊間の連携についても日ごろの訓練で養われている。災害の際には、連絡調整所が設けられ、自衛隊から連絡幹部が派遣される。指揮命令系統からいっても、自衛隊の方がシンプルとなっている。逆にいえば、自衛隊は国の命令があれば派遣できる組織であるが、警察・消防は自治体との調整が必要になる。そのため、自衛隊の方が使い勝手がよい。