桐谷健太から熱烈オファー? 沖田臥竜&藤井道人が明かす“異例づくし”な『インフォーマ』新シーズンの制作秘話
2024年11月7日よりABEMAにて放送開始となった『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』。2023年1月期に関西テレビ(カンテレ)の深夜連続ドラマ枠で放送され、さらにNetflixで世界配信が開始されるやいなや話題沸騰となった話題作の第二弾となる新シーズンだ。 【写真】沖田臥竜、藤井道人の撮り下ろしカット 社会を裏で操作する謎の情報屋“インフォーマ”・木原慶次郎(桐谷健太)と、巻き込まれ体質のゴシップ週刊誌記者“ポンコツ”・三島寛治(佐野玲於)の異色コンビが、次に立ち向かうのはタイ・バンコクを拠点とする闇バイトの指示役たち。 前作からのおなじみのキャストに加えて、池内博之、二宮和也、山田孝之ら豪華キャストも参戦。ストーリーもアクションもさらにスケールアップした新シーズンは、一体どのようにして実現したのか。企画・プロデュースを手掛けた藤井道人監督と原作・監修を担った小説家・沖田臥竜氏が本作の制作秘話について語ってくれた。 ・「ポンコツがバンコクの銃撃戦に巻き込まれてるところが観たい」 ――『インフォーマ』新シーズンとなる本作、どのようなタイミングで話がスタートしたのでしょうか? 藤井道人(以下、藤井):前作の最終話が終わったときだったので、去年の3月くらいでしたね。Netflixのドラマで2位だったんですよ。それが悔しくて(笑)。「次があるなら絶対1位、獲りましょう!」というパッションだったと思います。 沖田臥竜(以下、沖田):そうですね。 藤井:東京で放送しない関西ローカルのドラマだったのに、すごくたくさんの反響いただいて。やっぱり、やってきたことがそうして結実するのは、とても嬉しかったんですよね。だからこそ「沖田さん、ちょっともう1回やりませんか?」とオファーをさせてもらいました。 沖田:「次は海外でやりましょう! ポンコツがバンコクとかで銃撃戦に巻き込まれてるところが観たい!」とリクエストされて。 藤井:(にっこり)。 ――そんな穏やかな笑顔で、なんてむごいリクエストを(笑)。 藤井:でも観たいですよね? 前作の冒頭で、ポンコツが「なんでこんなことに、こいつのせいだ」みたいなシーンがあって。あのときは倉庫でしたけど、やっぱり新シーズンになってバージョンアップするなら、それが外国の銃撃戦くらいになってないとって思ったんです(笑)。もはや大喜利じゃないですけど、そんなノリで。そしたら、沖田さんもお願いしたらすぐにタイに行ってくださって。 沖田:行ったことのない国だったんでね。それで帰ってきてすぐに書き始めました。 ――すごいフットワークの軽さですね。とはいえ、『インフォーマ』で描かれるのは社会の闇の部分だと思うんですが、海外でどのように取材をされたんですか? 沖田:まあ、いろんなルートを使って。「こういうのが見たい」「どんな言葉を使っているのか知りたい」って言ったら、「ほな、この通訳で!」って。そういうアンダーグラウンドの世界に繋がる専用の通訳をつけてもらったんです。ちょうどそのころフィリピンで日本人が犯罪に手を染めているという話を聞いたり、ニュースなどで知っていたので、そこから組み立てていきました。やっぱり闇雲に作るんじゃなしに社会性のテーマを持ってっていうのは、藤井さんも常に考えられていることだから。まずはどういう感じなのかっていうのをざっくり見てきて。そのあと9月にもう一度行ったんですけど、そのときにはもう書き終わっとったんで。 ――どうしたらそんなに速く書き上げられるのですか? 沖田:自分の場合は、この世界で生き残るのはスピードやと思ってるんです。ここだけは負けられへんという。人間やればできると思うんですけど(笑)。会社員の方とかだと、日頃の生活でしんどい仕事とかあると難しいかもしれないですけど。自分はその時間、書くだけなんでね。 ・座長・桐谷健太は「影のプロデューサーといってもいいくらい」 ――ものすごい勢いで本が書き上げられるなか、撮影に向けた動きはどうだったのでしょうか? 藤井:なんなら健太さんを筆頭にキャストのみなさんが、もう僕ら以上にアツかったというか、熱気がすごかったですね(笑)。健太さんは『インフォーマ』が初主演ドラマでもあったので、この作品に対する座長としての熱がすごくて。健太さんと玲於(佐野玲於)とのバディとしてのパッションもすごく感じられましたし、そこに新しい沖田さんの本が乗っかったら「どういう風になっていくんだろう」とワクワクしました。今回は前作でセカンド監督だった(逢坂)元がチーフ監督をしてくれて、僕がプロデュースに入ったんですが、比較的スムーズに座組みが出来上がっていった印象ですね。 ――今作では二宮さんが、桐谷さんからの熱烈オファーで出演されることになったとお聞きしました。 沖田:自分らは自分らで「これができたら面白くないですか」というのがあって。そのなかのひとつが、森田剛さんと二宮さんの対峙だったんです。これが実現できたら新シーズンをやる意味もあるし。で、藤井さん自ら交渉に乗り出してくれて。スケジュール関係で難しい局面がいくつもありましたね。 役柄を変えてでも出られへんか、とかね。 藤井:ニノさんに関しては、僕が健太さんから電話番号を聞いて。「はじめまして、監督の藤井道人です」みたいな(笑)。ニノさんもちょうどまだマネージャーさんがいない状態だったんで、スケジュールの話を監督と俳優が直接やるっていう、なかなかない展開でした。途中からニノさん側もマネージャーさんが見つかったんでってなって。どんどん調整ごとが進んでいきました。結果、すごくいい役回りを演じてくださることになってよかったですね。 ――二宮さんがインタビューで「桐谷さんじゃなかったら出演していなかった」とも仰っていました。 藤井:本当に桐谷さんは、沖田さんが書かれた『インフォーマ』という世界を心から好きでいてくれて、最大のリスペクトがある感じが伝わってくるんですよね。前作が終わった瞬間「次はどうします?」と言っていて(笑)。影のプロデューサーといってもいいくらい。でも、原作者の沖田さんもタイの撮影現場まで行ってくださってアンダーグラウンド関連の監修もやってくださったので、もう僕としてはこのチームだから安心して届けられたのかなと思っています。 沖田:現場が大変っていうのは、まあどこも大変じゃないですか。でも、1番大変なのって仕事を“作る”ところだと思うんですよ。特に今回は俳優部の方々も「出たい」って言ってくれるような熱量の高い方々ばかりだったんで。藤井さんがセットアップまでが整えてくれれば、もうあとは……っていうね。でもやっぱり2人でおらんかったらできへんかった、それは強く感じますよね。 ・カンテレ→ABEMAで放送 異例を実現したABEMAの“熱量”と“配慮” ――これまで『インフォーマ』のみならず、映画『ヤクザと家族 The Family』とドラマ『ムショぼけ』などさまざまなメディアでタッグを組んで作品を発表されてきましたが、今回のABEMAというプラットフォームはいかがですか? 藤井:シーズンものってなあなあになっていくケースもあると思うんですけど、僕らの思いっていうのはその逆で。次回作を作るなら、もっと面白くしないと意味がないし、規模感も拡張させたいって考えていたんです。あとはやっぱり、前作が東京で放送できなかった部分に少し悔しさとかもあったんで。 そんなときにABEMAさんが手を上げてくださった。とはいえ、僕らも前作を一緒に作り上げた恩義がカンテレさんにもありますし、そこの部分の調整までABEMAさんが全部してくださって。こうして気持ちよく送り出してもらえる形になったのは、たぶん業界でも異例なことだと思うんですよね。それだけ作品に自信と覚悟を持たないとできないことだったので。 沖田:異例なことだとわかっていたからこそ、いろいろなところに配慮しながら進めていかなければならないなと思っていたところに、ABEMAさんが自分ら以上に気を遣ってくださった感じがしましたね。「こんなことまでやってくれるんや」って思うくらいに。それだけ『インフォーマ』に対して熱量を持ってやってくれてるんやったらその期待に応えたいなって、みんな思ったんじゃないでしょうかね。 ――お話を聞いていると、本作品のキーワードは「熱量」だなと改めて感じます。そのパッションの源というのは、どこから来るのでしょうか? 沖田:いまも藤井さんと話すことがあるんですけど、なんか自分らの打ち合わせって、仕事というよりもなんか少年たちが「この映画いいよね」とか「この歌良いよね」って話しているうちに、「こんなん作りたいな」「ほんなら、やろうよ!」と盛り上がるノリなんですよ。 ――なるほど。ではそうしたワクワク感がある限り、まだまだシリーズが続いていくことを期待しても? 沖田:もちろん、ちょっと話はしています。実は2つほど考えていることもあって。「これとこれを考えています」って藤井さんに言ったら、1個は断られました。「それだけはやめてください」って(笑)。 藤井:ちょっと無理なやつでした! ――藤井さんでもダメだったネタとは、どれほどの闇深いものなのか逆に気になってしまいますが(笑)。 沖田:でもね、最初の打ち合わせこそ仕事じゃないテンションですけど、ここはビジネスになってくるので。まずは新シーズンを観てもらって反響をもらって、藤井さんが「よし、行こう」ってならないと。こちらはいつでも動ける準備はしていますよ、っていうだけなんで。ビックリさせられるもんを、セットしていますから! 藤井:それを世に出すためにも、ぜひ『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』を楽しんでください!
佐藤結衣