【危険な肥満症治療薬の副作用】薬物療法に頼らず瘦せられる家庭医の“良い”アプローチとは?
病気や症状、生活環境がそれぞれ異なる患者の相談に対し、患者の心身や生活すべてを診る家庭医がどのように診察して、健康を改善させていくか。患者とのやり取りを通じてその日常を伝える。<本日の患者> T.H.さん、44歳、男性、証券会社営業マン。 【写真】日本でも肥満症治療薬としても処方できるようになったセマグルチド 「T.H.さん、こんにちは。前回の受診から今日まで、どうでしたか」 「この3カ月はずっと暑くて、『危険な暑さ』なんて言われるものだから外での運動は控えています。でもいろいろ工夫してるんですよ」 「そうですか。その工夫に興味がありますねー。話してもらっていいですか」 「もちろんです。まず、ちょっと歩いたところにある冷房の効いたホテルの中でジョギングをするんです。それから……」 T.H.さんは、目を輝かせて楽しそうに自分の「健康増進作戦」を語ってくれた。彼は、2022年7月の『家庭医、肥満ケアに悩む!ただの生活習慣病ではない』とその翌月の『家庭医が悩む肥満ケア 解決のヒントは映画にあり』に登場した、最初は麻婆茄子調理中に茄子のトゲを指先に刺して爪周囲炎を起こして受診した人だ。その時に肥満があることに私が気づき、それ以来、肥満症によるリスクの軽減によって得られる利益を目的にケアを続けている。
肥満症の薬物療法
もちろん、T.H.さんの「健康増進作戦」がずっと今日のように順風満帆だったわけではない。山あり谷ありで、最近の「失速」は今年の春のことだった。 ある日の定期受診日に彼はこう言った。 「先生、肥満に効く薬が出たって言うじゃないですか。私も試してみたいんですけど」 「薬による治療を試したいと思うんですね。その理由を聞かせてもらっていいですか」 「ええっと、なんか減量に疲れちゃったって言うか……1年ちょっと食事や運動に気をつけて来たけれど、これがいつまで続くのかなーって感じで。そしたら、最近ニュースやいろんなところで減量に効く『新薬』の話を聞くもんですから、薬の方が簡単にやせれるのか、先生に相談したかったんです」 「なるほど、そのように思っているのですね。じゃあまず、肥満症の治療に使われる薬の効果や使い方、そして副作用について概略をお話ししましょう。そしてその後で、T.H.さんがこの1年間にコツコツと努力したことが、T.H.さんの健康増進にどのぐらいプラスになったか振り返ってみましょう。今日の診療はそんな予定でよろしいですか」 「はい、お願いします」