「食事とお祈りができなかったらどうしよう」 留学生が増加し、学食にどんな変化が?
留学生の「安心感」になる
学食のハラル対応を徹底したのは、日本人学生が宗教を文化の一部と捉え、尊重する気持ちを育んでほしいとの思いもありました。「食神」の入り口脇にはムスリムの人々が礼拝前に身を清める「ウドゥー」が行える場所が設けられ、建物2階にはメッカの方向を示す「キブラ」のサインや敷物を備えた礼拝室も用意しています。 「ムスリムの学生たちは毎日欠かさずに1日5回のお祈りをし、食べるものにも注意を払っています。イスラム教というと、過激思想やテロといったイメージを思い浮かべる人もいるかもしれませんが、それはあくまで一部であって、彼らの多くがこうして生活のけじめをきっちりして過ごしていることを知るきっかけになればと思います」(今村社長) こうしたハラルフレンドリーな取り組みは、ムスリムの学生たちが安心して大学生活を送れる支えにもなっています。インドネシアからの留学生、エンダーさんは、「日本への留学で心配だったのは『食事とお祈りができなければどうしようか』ということでした。先輩から神田外語大学にはハラルメニューやお祈りの場所もあるから心配ないと勧められ、毎日楽しく学んでいます」と話します。 「食神」の1階中央にはステージがあり、例年10月に開催される学園祭「浜風祭」で学生たちがタイのラムタイやインドネシアのガムランなど各国の伝統舞踊や民族音楽を披露する場にもなっています。 「日々の学生生活の中で異文化に触れていると、もはや異文化ではなくなり、これが『ふつう』になります。海外に留学する学生も多いですが、例えば留学先でムスリムの人と出会って彼らの習慣を目の当たりにしても、自然に受け入れられるんですよ」(今村社長) 多様性や異文化交流を声高に唱えるのではなく、日常的にさまざまな文化を肌で感じられる環境や体験を提供することこそが、多文化共生社会を実現する近道といえそうです。
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