【日本人必読!】”トランプ外交”大解剖、政権がもくろむ「新・悪の枢軸」の分断、日米同盟強化に日本がすべきこと
トランプ政権がもくろむ「新・悪の枢軸」の分断
米国の安全保障政策については、トランプ氏に忠誠を誓うルビオ氏やウォルツ氏ら対中強硬派が国務長官や安保担当補佐官などの閣僚級候補に指名されており、米国第一主義と「力による平和」に基づく政策が追求されるだろう。米国は欧州と中東から手を引き、アジアを正面に備えるという政策に転換しつつ、同盟国にはさらなる負担の分担を求めることになるとみられる。さらに、中国と対峙するうえで、ロシア、イラン、北朝鮮を含む「新・悪の枢軸(CRINK)」が最大の障害であり、これらの国々にどのようにくさびを打ち込むかが大きな課題になる。 トランプ氏側近たちがCRINK分断の前提と考えているのが、ロシア・ウクライナ戦争の停戦である。中国、イラン、北朝鮮はいずれもロシアを支援しており、ウクライナでの停戦を実現しない限り四者の協力関係は強化されていくからだ。 トランプ氏はウクライナへの武器支援の継続と引き換えに、ゼレンスキー大統領にプーチン大統領との停戦交渉の受け入れと、北大西洋条約機構(NATO)への加盟の棚上げを求めようとしている。欧州の支援だけでは継戦は困難で、ウクライナも受け入れると考えている。一方、プーチン氏が停戦交渉に応じない場合は、ウクライナへの武器支援をさらに強化する方針を示し、何としても交渉の場に引きずり出そうと考えている。 停戦が実現すれば、双方が占領している領土の返還についての交渉も後押しすることになるだろう。ロシアが停戦に応じれば、トランプ氏側近は経済制裁の解除や外交関係の改善、ロシアの主要国首脳会議への復帰(G7からかつてのG8へ)などを通じて、中露の離間ができると考えている。 また、トランプ氏は中東のガザとレバノンでの紛争解決を図りたいと考えており、イスラエルのネタニヤフ首相に圧力をかけるだろう。激戦州ミシガンではムスリム票の動向がトランプ氏の勝利につながっており、選挙後にパレスチナ暫定政府のアッバス議長と電話会談を行うなど、2期目のトランプ政権はパレスチナへの配慮も欠かさないだろう。 一方、ハマスとヒズボラの後ろ盾になっているイランへの経済制裁を復活させ、軍事面も含めて最大限の圧力をかけることで、イスラエルが停戦を決断しやすい環境をつくり出していくだろう。イスラエルとヒズボラは期限付き停戦で合意したものの、イスラエル軍の空爆により、双方が「停戦合意違反」を主張する状態が続いている。 イランも国連大使をトランプ氏の側近となったイーロン・マスク氏に会わせるなど、トランプ氏との関係改善を模索している様子がうかがえる。トランプ氏側近は、中東が安定すれば、イランと中国の関係にもくさびを打ち込むことが可能になると考えている。 北朝鮮には非核化ではなく、軍備管理交渉を呼びかけるだろう。トランプ氏側近は、北朝鮮が破綻した非核化交渉に再度応じないことを理解している。軍備管理交渉の前提は北朝鮮を公式に核保有国と認めることが必要になるが、トランプ氏はこのまま北朝鮮が核ミサイル戦力の増強を続け、米国に対する脅威がさらに増すことよりも、軍備管理によって歯止めをかけることを重視するだろう。北朝鮮を核保有国と認めても、イランに対して最大限の圧力をかけていれば、イランの核保有を防げるとも考えている。なにより、北朝鮮との関係改善によって、北朝鮮の中国に対する依存度が下がることを期待している。 以上のような外交がCRINKの分断につながるかどうかは予断を許さない。ロシアがウクライナ領土を占領したままで停戦を仲介することや、ロシアのG8への復帰、北朝鮮を核保有国として認めることは国際社会に波紋を広げるであろう。 しかし、これが2期目のトランプ外交の大枠になることを前提に日本も対外政策を立て直す必要がある。