株式投資にいちばん役立つ情報!?「適時開示」って何ですか?
有価証券報告書は見てもムダ?
株式投資の参考情報として有価証券報告書を利用する方は多いかと思います。しかし、じつは有価証券報告書は株価にほとんど影響を与えません。少なくとも短期的な影響はゼロです。有価証券報告書が開示された後、それを原因として株価が変動するということはありません。これは四半期報告書についても同様です。 たしかに有価証券報告書は、決算情報を含めて会社の情報が網羅的に記載されており、会社の内容を総合的に判断するうえで役に立つ情報です。そのため、長期的に保有する株式を選ぶにあたっては、有価証券報告書を参考情報として利用すべきです。しかし、有価証券報告書によって短期的な株価の変動を判断することはできません。
株価は適時開示で動く
それに対して、適時開示の影響はすぐに株価に反映されます。企業の株価は日々変動しますが、その原因のうち最も大きなものが適時開示なのです。 有価証券報告書も適時開示も、ともに上場会社が投資家に対して開示する情報なのに、なぜ株価への影響の仕方が異なるのでしょうか? それは、まずそれぞれの開示される時期が異なることによります。 投資家の投資判断への影響が大きな情報としては、決算情報がありますが、それは、有価証券報告書と、適時開示の一つである決算短信に掲載されます。有価証券報告書が開示されるのが、決算期末の3カ月後頃(金融商品取引法により3カ月以内の開示と決められている)であるのに対して、決算短信は決算期末の30日から45日後頃に開示されます。投資家は、決算短信により最初に決算情報を知るのです。 四半期の決算情報についても同様で、それを投資家が最初に知るのも、四半期決算短信です。四半期報告書が開示されるのが、四半期決算期末の45日後頃(金融商品取引法により45日以内の開示と決められている)であるのに対して、四半期決算短信は、通常、四半期決算期末から30日以内に開示されるのです。
TDnetとEDINETの違い
有価証券報告書と適時開示の株価への影響の仕方が異なる理由には、それぞれの開示される時期が異なることのほかに、TDnetとEDINETの仕組みの違いもあります。 有価証券報告書が掲載されるEDINETは、ご覧になったことがある方はご存じかと思いますが、会社名などにより情報を検索するようになっています。それに対して、適時開示が掲載されるTDnetは、開示した順にどんどん情報が掲載されるようになっています。EDINETでは、いちいち目的とする情報を探さなければ、情報を見ることができませんが、TDnetでは、そのサイトを開くだけで、開示されている情報が目に入ってくるのです。もちろん会社名や証券コードなどキーワードで、気になる情報を検索することもできます。
最初に開示されるオリジナルの情報
このように、上場会社の重要情報が最初に世の中に示されるのが適時開示であり、それにより株価が変動しているのです。適時開示は、株式投資をするにあたって必須の情報なのです。 ちなみに、新聞の企業欄の記事も、記者が取材して書いたものとは限らず、適時開示をもとにしたものであったりします。決算に関する記事は、決算短信の情報を写しただけですし(すべての会社が決算発表をしているわけではない)、そのほかの記事も、前日か数日前の適時開示をもとにしたものがほとんどです。関心のある記事があったら、オリジナルの適時開示を確認すべきでしょう。 (事業創造大学院大学准教授・鈴木広樹)