南インド料理の火付け役「エリックサウス」総料理長が考える、人を引きつける接客とは?
僕は料理人です。 店の奥にある厨房の片隅で、一心不乱に手を動かして料理を作っている時だって、いつもその料理が届けられるお客さんに思いを馳せています。(中略) 僕はまた店主でもあります。お客さんと他愛もない会話をしたり、店の経営状況に頭を抱えたり、まだ見ぬお客さんを店に呼ぶにはどうすればいいかを考えたり、何かとやることがあります。 そして僕はお客さんです。お店に行ったら、そのお店を目一杯楽しむことがモットーです。(「はじめに」より) 『お客さん物語:飲食店の舞台裏と料理人の本音』(稲田俊輔 著、新潮新書)の冒頭でこう述べる著者は、南インド料理専門店「エリックサウス」総料理長。南インド料理の火付け役としても有名なので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。 本書は、料理人として、サービスマンとして、店主として、お客さんとしての立場から、起こったことや感じたことについて思いを綴ったもの。その内容は、さまざまな飲食店におけるさまざまな出来事を巡る自身の“心象風景”なのだとか。研究書でもルポルタージュでもないからこそ、「物語」だというわけです。 客観的であるようには努めました。幸いこれまで飲食の世界で、お店側、お客さん側、それぞれを様々な立場で経験してきています。 だからこの本は、飲食店をいかに楽しむかのマニュアルとしても、もしかしたら役に立つのかもしれません。(「はじめに」より) この文章が「ただし、楽しみ方は千差万別ですし、そもそもそうあるべきです」と続くことからもわかるとおり、必要以上に専門的ではなく、感じたままに書かれているところが最大の特徴。 きょうはII「飲食店という“文化”」のなかから、「接客」についての考え方が述べられている「『接客』という概念の無い店」をピックアップしたいと思います。 お客さん物語 飲食店の舞台裏と料理人の本音 (新潮新書) [ 稲田 俊輔 ] 946 Amazonで見る 946 楽天で見る