角田裕毅、スワップ騒動を経て「雨降って地固まる」 ニューマシンはQ3突破&ポイント奪取の能力高し
夜になれば気温が20度を下回り、吹きつける強い風が肌寒さを感じさせたバーレーンから、わずか2時間のフライトで降り立ったサウジアラビアのジェッダは、隣国というのが嘘のような暑さだった。 【写真】「角田裕毅のトロロッソを彷彿?」F1参戦10チーム「2024年型」ニューマシン・フォトギャラリー 世間はあいかわらず、開幕戦バーレーンGP決勝の出来事について賑やかだった。チーム(ビザ・キャッシュアップRB/以下RB)の戦略ミスというよりも、ドライバースワップの指示による両ドライバー間の緊張、そして両ドライバーとチーム首脳陣との緊張を煽るような記事やコメントが溢れかえっていた。 チームは土曜の夜、レース内容を振り返って分析する通常のデブリーフィングが終わったあとに、今回のドライバースワップの件についてじっくりと話し合ったという。 「特にドライバースワップのことについて話し合いましたし、お互い理解し合ったので、そこが一番重要なことかなと思っています。(ダニエル・リカルドとは)1対1での話は特にないですけど、チームとみんなで話してお互いのことを理解して、特にわだかまりもないですね。 デブリーフィングはふだんどおりクルマのことを話しましたし、ドライバースワップについての話とは分けて、今後に向けてクルマを速くできるように、僕としても気持ちを入れ換えて話をしました」 そう語る角田裕毅の視点で見れば、ケビン・マグヌッセン(ハース)を攻略できそうなところで譲れと言われたことには不満を感じるだろうし、最後にポジションを戻してもらえなかったことにも不公平さを感じる。 その一方で、ダニエル・リカルドの視点に立てば、新品ソフトを履いて速いペースで追い上げてきたのだから、抑え込むことなく先行させてくれればマグヌッセンを攻略できたはずだという思いもある。 つまり、誰かが「正義」で誰かが「悪」ということではなく、お互いが相手に不満を感じるようなチームオーダーだったことは確かだ。
【ドライバースワップのルールが守られなかった理由】 チームに対する不満は不満として、指示に対する無線での反応やクールダウンラップでのドライビングなど、自分にもよくない部分があったという自責の思考で改善点を見詰め直したと角田は言う。 「ターン8はテストの時からロックアップしやすいコーナーでしたし、たまたまロックアップしただけなのが変なふうに見えてしまったかなと思いますけど、あれはあれで不必要なことではありますし、そういうことはなくしていくということですね。僕は僕で、自分がやってしまったというか反省点を見詰め直して、次は絶対に繰り返さないように、これからにつなげていくつもりです」 リカルドの側も、無線でのやりとりなどについて反省点はあるとしている。 そしてチームの側も、ドライバースワップのやり方に問題があった。指示を出すタイミングも遅ければ、実行するタイミングも遅かった。そして追い抜きができなかったにもかかわらず、ポジションを戻す指示を出さなかった。 実は、これは従来からチーム内で行なわれてきたドライバースワップ時のルールには反するやり方だったという。しかしRBはチームCEO、チーム代表、レーシングディレクターといったように、ピットウォールの半数近くが入れ替わっており、バーレーンGPが新しい首脳陣で臨む初めてのレースだった。そのせいで、既存のルールが徹底されなかったのだ。 その点も、従来のルールが正規のスワップ方法であり、今回のミスを認めたうえで、今後は従来のルールに沿って行なっていくという再確認が取られた。 加えて、最も不利益を被ることになった角田に対しては、レース直後にローラン・メキース代表が個別に面談してお互いの意見を交わし、理解を深め合ういい機会になったという。 「彼は僕に対して怒るわけでもなく、ただチームに理解してほしいということでした。僕も意見を伝えて、お互い怒りをぶつけ合うこともまったくなかった。理解を深め合って、できるだけ同じように足並みを揃えて再出発しようという話をしました」 ある意味では、雨降って地固まる。新体制のチームにとっては、早い段階でこのショック療法を取っておくことは、かえってよかったのかもしれない。