北陸新幹線<小浜・京都ルート>来年度着工断念は「急がば回れ」…財政負担に不安、酒造組合は地下水懸念
北陸新幹線の敦賀―新大阪間の延伸を巡り、与党の整備委員会(委員長=西田昌司参院議員)は年内の詳細なルートの決定を見送った。来年度としていた着工を事実上断念し、地元の合意形成を優先する構えだ。沿線自治体などの懸念解消に向け、具体的な対策や科学的な知見を示すことが早期着工への鍵になりそうだ。(岩崎祐也) 【図表】主な課題
敦賀以西を巡っては、政府・与党が2016年に「小浜・京都ルート」に決定。与党の整備委は今年8月から、京都市内の駅の位置とルートが異なる3案の検討に入り、今月20日、JR京都駅南側の南北方向に設置する「南北案」、JR桂川駅付近に設ける「桂川案」の2案で引き続き検討することを決めた。
この決定を、西田委員長は「急がば回れ」と表現する。整備委の聞き取りで今月13日、西脇隆俊知事や松井孝治・京都市長が示した地下水や財政負担などへの懸念を踏まえ、改めて地元説明に注力し、着工条件の一つの「自治体同意」をクリアするといった意味だ。
中でも懸念の声が大きいのは地下水への影響だ。工事には地下を掘り進めてトンネルを造る「シールド工法」が採用される見込みだが、国土交通省などはトンネルが地下水の流れを妨げる恐れはないと強調。市営地下鉄東西線(二条―太秦天神川駅間)は同じ工法で造られたが、市の資料には「周辺井戸への影響はほとんどなく、補償件数はゼロ」との記載もある。
一方、西脇知事が「目に触れないから不安が広がりやすい」と言うように、東西線や阪急京都線よりも深い位置を掘り進めることへの懸念はある。地下水は古くから様々な産業で活用されており、酒造組合などは将来の水質変化を危ぶみ、府市に要望書を渡した。
延伸の工費は最大5.2兆円(南北案)と試算され、沿線自治体には、財政負担も気がかりだ。整備新幹線の建設費はJR西日本から入る「貸付料」を除いて、残りを国が3分の2、沿線自治体が3分の1を負担するのが原則となっている。