国民民主党・経済政策の財源問題①:減税は財政赤字を削減させる?
103万円の壁対策は低所得層に限定した減税に
衆院選で躍進した国民民主党は、与党との政策協議を行っている。そこで大きな焦点となっているのは、国民民主党が掲げる「103万円の壁」対策だ。基礎控除、給与所得控除の合計を現在の103万円から178万円まで拡大させ、課税最低水準を引き上げることで、労働時間の調整による人手不足を緩和させるというものだ。 「103万円の壁」対策は重要であるが、国民民主党の案は、すべての所得者に適用される減税措置であることが問題を生んでいる。それは、所得水準が高く、高い税率が適用される高額所得層により大きな減税の恩恵が及ぶことだ。これは所得格差を拡大させてしまう。 国民民主党は衆院選挙を通じて、「手取りを増やす」と訴えてきた。高額所得者の手取り収入を増やすことを目指している訳ではないだろう。また、若者の支援も訴えてきたが、これは低所得層支援と重なるものだ。「103万円の壁」対策である所得減税は、こうした国民民主党が掲げる理念と相いれない面がある。 第2の問題は、巨額な税収減となることだ。基礎控除、給与所得控除の合計を現在の103万円から178万円まで一律に引き上げる場合(住民税も含む)、政府の試算によると、7.6兆円程度の大幅税収減となる。国民民主党は所得税の恒久減税を主張しており、そのためには、毎年、この規模の税収減を賄う恒久財源が必要になる。それはほぼ不可能だろう。 ちなみに、所得税の基礎控除などを103万円から178万円まで引き上げ、それ以上の年収の人には従来通りに103万円の基礎控除などを適用する場合には、筆者の計算によれば、税収の減少規模は年間1030億円程度にとどまる(コラム「国民民主党の基礎控除等拡大策(年収の壁対策):1,030億円程度の減税規模で217億円程度の景気浮揚効果か」、2024年10月30日、「国民民主党の減税策(103万円の壁対策)を与党は修正のうえ受け入れるか」、2024年10月30日)。