次期フランス首相、バルニエ氏失脚劇から学べ-ルペン氏は宥められず
パリ6区にある高級イタリアンレストランで、極右の2人はバルニエ氏から引き出した譲歩の数々について祝杯をあげた。電気税引き上げ計画の撤回、外国人への医療補助金の削減、2025年に新しい移民法を制定する可能性などだ。
一方、首相府は午後1時30分に声明を発表し、医療費払い戻し削減案を断念することを明らかにするとともに、それがルペン氏の要求によるものであることを明確にした。バルニエ氏は、これで予算案の可決がほぼ確実となり、少なくとも当面は政府の存続が確保されると考えた。
午後2時頃、ルペン氏から電話がかかった。
ルペン氏はバルニエ氏に対し、来年1月から年金を事実上削減する案も撤回してほしいと述べた。年金削減によって、財政赤字を減らすための約9億ユーロ(約1400億円)が捻出される予定だった。
バルニエ氏はこの時、どれほど譲歩したとしても、ルペン氏は自分に不信任を突きつけるつもりであることに気づいた。
午後2時40分、バルニエ氏は国民議会で、憲法規定を発動して予算案を通過させると発表した。それは不信任投票につながり自分は退陣に追い込まれるだろうと述べた。バルニエ氏の任期は、第五共和制史上最も短い3カ月だった。
バルニエ氏の事務所は、この記事に関するコメントを控えた。RNの広報担当者はコメント要請にすぐには回答しなかった。
今週の世論調査では、ルペン氏の決断が同氏に良い結果をもたらしたことが示された。支持率は上昇し、27年の次期大統領選における最有力候補としての地位を固めた。
しかし、バルニエ氏を倒したことは長期的にはルペン氏にマイナスとなる可能性がある。財政危機の真っただ中に首相を退陣に追い込むという行動は、国民連合が統治に不適格な政党であるという評判を復活させるかもしれない。ルペン氏は長年これと闘ってきた。
「バルニエ氏に対する仕打ちは一部の有権者を喜ばせたかもしれないが、ルペン氏に傾倒していた保守派を怖がらせる結果にもなった」と、政治史家のジャン・ガリグ氏は語った。