伝説の国産手書きタブレット「enchantMOON」は「失敗」だったのか? 今どうなっている?
2013年時点で「手書きそのもの」はGalaxy Noteやブギーボードなどで一定のニーズを満たせる状況ができあがっており、Apple Pencilの登場も「時間の問題」だったと言えます。つまりライトな手書きニーズはすでに満たされており、enchantMOONは「ハードコアな手書きニーズ」を満たすための端末だったと言えるでしょう。 そうした「手書きのこだわりを持つクリエイター層」は良くも悪くもニッチ層ではないか?というのは、端末コンセプトへの不安点として指摘できます。また「紙を上回る書き心地や、思いついたことをすぐ書ける起動の早さなどがなければ、紙にこだわる人は満足できないのではないか」という点も、同じく不安点として指摘できるでしょう。 ■良くも悪くも「MOONBlock」による制約が大きい 手書きで作ったシールに対して「MOONBlock」でプログラミングが可能な点もenchantMOONの特徴です。もっとも、MOONBlockは簡単なゲーム作成などに適したビジュアルプログラミング言語の1つです。 つまりJavaScriptやJava、Pythonなどプログラミング言語の知識を持つ方が、手書きでメモしつつコーディングもする端末としては物足りない側面があります。 またプログラミング知識がない方にとっては、端末を使いこなすためにMOONBlockの学習コストが発生してしまう点が「めんどくさい」ポイントの1つ。Galaxy Noteに思いついたアイデアやスケッチ、設計図などを手書きで書いたうえでEvernoteに同期させる方が直感的かつ実務的にも使いやすい場面は少なくなかったでしょう。
事実、今日でもiPadにApple Pencilで手書きスケッチやメモを書いたり、スクリーンショットを撮影してそのうえに書き込み。それらのデータをNotionなどで管理している方もいるのでは? また仮に作りこんだ「シール」を用意したとしても、動作するのはenchantMOONです。その他の端末に同期するハードルがあまりに高すぎる点も問題点だったと言えるでしょう。 ■動作のもっさり感などハードの問題 初期のenchantMOONは、ハードウェアの性能面で課題がありました。enchantMOONは良くも悪くもAndroid OSを一企業がフルカスタムして作り上げた2013年の端末。動作が鈍い点も、不評を集めました。こうした問題は後のバージョンアップである程度は改善されましたが、それでもなお悪印象が残ってしまった可能性があります。