リニアの静岡県内での着工目標示さず JR東海社長 不安払拭を優先
JR東海の丹羽俊介社長は5日、大阪市内で開いた定例会見で、リニア中央新幹線のトンネル工事の前段階にあたるボーリング調査が11月に山梨県内から静岡県内に到達したことに関連し、今後のトンネル工事着工の具体的な時期は示さず、引き続き周辺自治体との対話を入念に行う姿勢を強調した。丹羽氏は、環境への影響を不安視する住民がいるとして、その払拭を優先するべきだとの考えを示した。 静岡県内でのボーリング調査をめぐっては、川勝平太前知事が静岡県内の水が県外に流出する恐れがあるとして反対を続けていたが、リニア推進を掲げる鈴木康友氏が5月に知事に就任し、方針を転換。静岡県は9月にボーリング調査実施を容認し、JR東海は山梨県側から静岡県境に向け工事を進めていた。 丹羽氏は会見で、今後のトンネル工事については「いつまでに着工をしたいという期限があるわけではない」と強調。工事により、水位低下などの危険性が指摘された大井川流域の住民には「水資源や生態系、自然への影響を不安に思っている方々がいる」と述べて、引き続き慎重な対話が必要との考えを示した。 リニアに関し、JR東海は3月、静岡県内の工事が遅れたことなどを背景に、品川―名古屋間の2027年開業目標を断念すると表明している。 このほか丹羽氏は、JR東海とJR西日本が今月3日、東海道・山陽新幹線の「のぞみ」の自由席を2025年春に3両から2両に減らすと発表したことに言及し、「指定席への利用者のニーズが高まっているため」と説明した。(黒川信雄)