「性別の本質は、外見ではなく内面にある」トランスジェンダーの訴えが司法を動かした 「生殖不能手術を求める法律」は憲法違反か
「(手術要件には)憲法違反の疑いが生じている。人格と個性の尊重という観点から適切な対応がされることを望む」 決定後に記者会見した臼井さんは、最高裁の判断について一定の評価をした。「比較的前向きな内容で、一定の理解はしてもらえた。今までの苦労が報われ、次につながると思う」 ▽法改正で結婚が可能になるが懸念も 臼井さんは現在、新庄村で農業を営みながら、パートナーとその息子(13)と暮らす。人口が千人を切る村では実質的に家族と認められている。ただ、法律上の関係はなく、マイナンバーカードを代理で受け取れないといった不都合もある。 別のトランスジェンダーが訴え、最高裁で審理されている家事審判で、大法廷が「違憲」と判断されれば、特例法が改正になって手術しなくても性別変更が認められるはず。そうなれば、パートナーと法律婚することも可能だ。 最高裁決定を前に、前向きな司法判断も出始めた。10月11日、静岡家裁浜松支部が規定を「違憲」と判断。手術規定については、こんな指摘をした。
「性同一性障害者の意思に反して身体への侵襲を受けない自由を制約するのは合理的とは言いがたい」 この判断に、臼井さんも喜んだ。「これまで多くの当事者が訴え、一段一段上ってきた階段。また一つ駒を進めた。感慨深い」 一方で危惧もある。性的少数者への理解は格段に広がったが、一部には「『性自認は女性』と主張する男性が、女子トイレや女湯に入ってきたらどうするのか」と声高に叫ぶ人もいる。法律が変わったとしても、社会が「性別は男女二つしかない」との前提で成り立っていれば、反発を招くだけではないのか。 「トランスジェンダーがどうしたら生きやすくなるか。裁判をきっかけに社会が真剣に考えてくれたら」。そう願いながら、扉が開く日を待っている。