『海に眠るダイヤモンド』“永遠の約束”はなぜ叶わなかったのか 第1話の謎が明らかに
「生きてて楽しいんすか?」 その玲央(神木隆之介)の言葉は、私たち視聴者にも問いかけられているような気がした。「もっと思いきり笑って、誰かのために泣いたり、幸せになってほしいって祈ったり。『石炭が出てほしい』って心の底から願ってみたいんですよ。 ダイヤモンド……俺もダイヤモンドがほしい」 【写真】リナ(池田エライザ)と一緒に小舟で島を出ていったのは鉄平(神木隆之介) そう、玲央が羨ましくなるくらい、鉄平(神木隆之介/1人2役)の目を通して語られた端島は、そして彼の周りに生きた人々はキラキラしていた。島のために、友人のために、愛する人のために、家族のために。誰かを思って、精いっぱい命を燃やす人たちのなんと眩しいことか。 日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)第8話は、坑内火災をきっかけに眠りについた端島炭鉱の半年間が描かれた。水没放棄した竪坑に変わる新たな区域の開発。それが叶わなければ、端島は解散することになる。しかし、その日を待たずとも約2000人が端島を離れることになった。そこには、顔なじみとなった炭鉱夫たちだけでなく、結婚や出産に対して大きな声ではいえない不安を抱えていた百合子(土屋太鳳)の愚痴を受け止めてきた映画館長の大森(片桐はいり)や、素性のわからないリナ(池田エライザ)を何も聞かずに迎え入れた職員クラブの管理人・町子(映美くらら)も含まれていた。 いつだって会えると思っていた親しい人たちを見送るのはさみしいものだ。この別れのラッシュを止めることができるのは、着炭(炭にたどり着く)のみ。端島の生活は、なにはともあれ石炭がなければ始まらない。なかでも端島が眠りから覚める日を特別な思いで待つのは、朝子(杉咲花)だった。鉄平が石炭が出たら「必ず」と約束をしてくれたのだ。そこに続く言葉はみなまで言わずともわかっている。ダイヤモンドを添えた、永遠の約束だ。 「ダイヤモンドよりもギヤマンがほしい」という朝子の言葉に、小さいころに鉄平がくれたあの空き瓶を思い出す。いわばゴミとも言える古びた空き瓶。なのに、朝子にとっては世界で一番キラキラして見えたもの。現代のいづみが「時代を越えて受け継がれる意思」と力強く語っていた姿を思うと、彼女にとって最も尊いものは時間や空間をも超える思いなのだとわかる。 江戸時代、遠い国から運ばれてきたというギヤマン。そこにはどんなストーリーが詰まっているのだろうかと思いを馳せる。そして、そこに今度は鉄平と朝子の未来が続いていくのだと信じてやまなかった。「石炭が出ますように……石炭が出ますように……」。そう花に向かって静かに祈り続ける朝子。だが、彼女の知らないうちに周囲の時計はものすごい速さで動いているように感じた。 鉄平は、兄・進平(斎藤工)の忘れ形見となった誠の体調不良を受けて、リナとともに長崎の病院へ通うことに。父・一平(國村隼)も長年の炭鉱夫生活がたたり、今では入院生活。そんな心もとない日々を過ごしていた母・ハル(中嶋朋子)から、リナといっしょになってはくれないかと相談される鉄平。もちろん、鉄平の心は朝子にある。しかし、リナと誠を家族として放っておくこともできない。献身的にリナと誠の世話をする鉄平の姿に、複雑な気持ちを抱いたのは銀座食堂で働く虎次郎(前原瑞樹)。その虎次郎が、後の朝子の夫となる人だという。優しくて真面目な青年ではあるが、これまで鉄平の恋を応援してきた身としては少々面白くない人物だと思ったのは、玲央だけではあるまい。