遺産相続の「法定相続分」とは?…法律から見た「相続人の範囲」と「遺産分割の割合」【相続専門税理士が解説】
相続時の遺産分割においては、民法で定められた「法定相続分」によって、相続人となる人、また、その立場によって分割される遺産の割合などが明確に決められています。多くの場合、遺言書があればそれに従うか、もしくは遺産分割協議で相続人同士が納得のうえ分割しますが、そうでない場合、法定相続分に則った遺産分割が行われます。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
相続時、相続人の遺産の取り分を定める「法定相続分」
父が他界し、これから相続手続きを行うことになりました。過去に相続を経験したという知り合いから、民法の「法定相続分」では、どのように遺産を分けるかが決まっていると聞きましたが、法定相続分とはどのようなものでしょうか? 会社員(40代・神奈川県秦野市) 法定相続分とは、亡くなった人の財産を相続する際に、各相続人の取り分として、法律上定められている割合のことです。この割合は亡くなった人との関係によって変わります。 「法律上定められている」とはいえ、遺言書があればそれに従うことになるほか、遺言書がなくても、遺産分割協議で話し合い、合意が形成できれば、必ずしも法定相続分で分ける必要はありません。 あくまで話し合いの目安になる割合、あるいは、話し合いがまとまらずに裁判で争う際に使う割合だと考えてよいでしょう。
「法定相続人」とは、どのような立場の人なのか?
法定相続分での遺産を分割した際に、遺産を受け取ることのできる人物を「法定相続人」といいます。この法定相続人のなかでもどの順位に該当しているかによって、相続割合は変わってきます。 ここでは、誰が法定相続人となるのかについて解説していきます。 ◆亡くなった人の配偶者は、必ず相続人(内縁関係・事実婚を除く) まず、亡くなった人の夫や妻、つまり被相続人の配偶者は、必ず相続人となります。ただし、この配偶者というのは、市区町村役場に婚姻届を出した人に限ります。内縁関係や事実婚の相手は、相続人にはなりません。 逆に、婚姻届が提出されている夫婦であれば、結婚生活の期間の長さなどは、関係ありません。仮に、婚姻届を出した翌日に結婚相手が亡くなったとしても、配偶者として相続人となります。 ◆子は当然相続人だが…「配偶者相続人」「血族相続人」の考え方 被相続人に子どもがいた場合、子ども(直系卑属)も配偶者と同様に必ず相続人となります。相続順位としては第1順位になります。 もし被相続人に子どもがいない場合は、その親(直系尊属)が第2順位として相続人に、親もいない場合はきょうだいが第3順位として相続人となります。 法定相続分に沿って遺産を分割する場合は、配偶者と、相続順位の最上位者のみが相続人となります。そのため、もし被相続人に子どもがいた場合は、被相続人のきょうだいが相続人になることはありません。 法律用語でいうと、配偶者のことを「配偶者相続人」、それ以外の親族を「血族相続人」といい、血族相続人がいる場合、配偶者と親族が、ともに相続手続きをおこなうことになります。 また、被相続人の子どもがすでに亡くなっている場合はその子ども、つまり被相続人の孫がいれば、その孫が相続人になります。このことを「代襲相続」といい、孫は「代襲相続人」と呼ばれます。 そのほかにも、レアなケースではありますが、子どもがおらず、両親も他界している方が亡くなった場合は、被相続人の祖父母が代襲相続人となります。 また、被相続人に子どもも親もおらず、第3順位に相続権が発生した者の、当のきょうだいも亡くなっている場合は、きょうだいの子、つまり被相続人の甥や姪が代襲相続人となります。 ◆養子も実子と同様に相続人 被相続人に養子がいた場合は、実子と同様の扱いとなり、相続人になります。 また養子は、育ての親と生みの親、どちらが亡くなった場合でも相続人となります。しかし、特別養子縁組をしている場合は生みの親との親子関係が消滅するため、育ての親が亡くなったときにのみ、相続を受けることとなります。 ◆これから生まれる子も相続人 もし、妻が妊娠中に夫が亡くなってしまった場合、お腹にいる胎児も、相続人になります。 しかし、生まれたばかりの子どもには意思能力がないため、遺産分割の際には代理人を立てる必要があります。 ◆結婚していない相手との間の子でも、認知されていれば相続人 結婚していない相手との間に子ども、非嫡出子がいる場合は、その子どもを認知しているか否かで相続人になるかの可否が決まります。認知している場合は相続人になり、相続分も嫡出子と変わりません。 ◆再婚相手の連れ子も、養子縁組していたら相続人 被相続人が再婚しており、再婚相手に連れ子がいた場合、被相続人が連れ子と養子縁組をしていれば、連れ子も相続人となります。逆に、養子縁組をしていなければ相続人にならないため、注意が必要です。
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