茂木健一郎「大事なことは、視点を変えてみること」“固定観念”にとらわれないために実践していることとは?
脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。 今回の配信では「固定観念」に関する質問に答えました。
<リスナーからの相談>
茂木さんに質問です。私は「世間が思う普通と違ってはいけない!」と勝手に思い込んで、自分の首を自分でしめてしまいます。どうしたら固定観念を変えることができますか?
<茂木の回答>
茂木:世の中には、科学的な根拠が何もないことがあります。たとえば、「男の人はこうだ」とか「鹿児島県人はこうだ」といったものは全部、固定観念です。そういう意味で言うと、血液型、ジェンダー、出身地とかもそうです。世の中は固定観念だらけですよね。 ただ、脳の働きからすると、固定観念は悪いことだけとは言えないです。たとえば、血液型と性格の関係性を、僕はまったく信じませんが、それで会話が盛り上がったりしますよね。そういう意味においては、我々が世の中に対して思っているさまざまな思い込みというのは、悪いことだけではないのです。それをうまく活かすといいのかなと思います。 大事なことは、やはり視点を変えてみることなのかなと思います。たとえば、僕は脳科学をやっていて「男の脳と女の脳ではどう違うのですか?」みたいなことを聞かれたりします。実際のところ、科学的にはそこまで差はありません。ただ、言っている相手の立場に立ってみると、「そういうことについて考えるきっかけがあったのだろう」と思ったりもするのです。男性はこう、女性はこう、と話していると、実はそこから話が広がったりします。 相談者さんは「世間が思う普通」と書かれていますが、世間ってたとえばどういうことでしょうか。ひょっとしたらご家族かもしれないし、お友達、職場の方かもしれませんね。あるいは、普通って何でしょうか。「こういうふうに生きるのが普通です」というのは、いつ、どこで、誰が言っていました? そういう話をしていると、そこから話が広がっていくのです。 一番大事なのは、「固定観念をゼロにしましょう」というふうにしないことです。そうすれば、話のきっかけになったり、どういうことかお互いに考えるスタートラインになったりします。全否定をしないで、まずは引き受けたうえでいろいろ考えていくと、自然に自由になっていけるのかなと思います。 脳科学の研究を長くしている僕が固定観念にとらわれないために実践していることは、やはり人の話を聞くことです。人の話というのは、本当に面白いです。こういうものを好きなのか、こういう考え方しているんだなということがわかるので、ぜひ相談者さんも人の話を聞いてみてください。そして、人の話を聞くきっかけとして固定観念からスタートしてもまったく問題ありません。それぐらいの大らかな気持ちで楽しんでいただけたらなと思います。 (「茂木健一郎のポジティブ脳教室」放送より)