示した可能性と突き付けられた現実 宮崎で生まれた2人のFWが初の国際舞台で感じたこと
チーム立ち上げ当初から主軸を担っていた名和田がグループステージで調子を落とした。初戦のポーランド戦で先発出場を果たしたが、本職ではない右サイドハーフでのプレーに苦戦。守備に追われ、持ち前の攻撃センスが全く発揮できない。そして何より、球際での弱さを露呈し、世界基準で見た時に明らかに強度が足りていなかったのだ。 「出場時間なくて相当悔しいと思う。ただ、強度やものすごくフィジカルの要素がある戦いを考えた時に(難しかっか)。やっぱり選択肢になっていかないと」(森山監督) 森山監督が報道陣にも本人にも伝えたように、グループステージで巡ってきた出番は初戦だけ。2、3戦目はピッチに立てず、悔しい想いを味わった。 怪我明けだった道脇豊(熊本)も含め、名和田などの攻撃陣が苦戦を強いられるなか、彗星の如く現れたのが高岡だった。アジアカップの鬱憤を晴らすかのように、初戦のポーランド戦で途中出場ながら決勝点をマーク。「絶対に自分がチームを助ける」とモチベーションを高めていた男は、0-0で迎えた後半32分に左足で豪快に蹴り込んでチームを勝利に導いた。 このゴールが高岡に自信をもたらし、その後のプレーに大きな影響を与える。続くアルゼンチン戦は先発に抜擢。チームはフィジカルコンタクトを得意とする相手に手を焼いたが、献身的なプレーで懸命に流れを引き寄せようとする。そして、0-2で迎えた後半5分。反撃の狼煙をあげる一撃を突き刺す。右SB柴田翔太郎(川崎U-18)の折り返しに泥臭く合わせた。最終的に1-3で敗れたが、またしても高岡がネットを揺らした。 成功体験の積み重ねがさらなる自信を生み、高岡の成長スピードは一気に加速。グループステージ突破が懸かるセネガル戦も後半途中から起用され、均衡を破る先制弾を含めて2得点。2-0で勝利したチームのゴールだけではなく、グループステージで奪った4ゴール全てが高岡という状況となり、攻撃の切り札からチームの得点源に大化けした。 「初戦のポーランドで良い形で決められた。いけるんじゃないかという自信がついて、そこからアルゼンチン戦でもネットを揺らせて、今日も決められた。本当に自信が付いている」(高岡) 自分より大柄で身体能力がある相手にもビビらない。ボールを持っても相手の前に体を入れて、巧みなコース取りでどんどんボールを運んでいく。献身的な守備も光り、プレーの一つひとつに自信が漲っていた。 その活躍を見て火が付いたのが、名和田だ。「めちゃくちゃ悔しい」と話し、短い言葉ながらも危機感を感じさせる様子があった。同郷のライバルが躍動する姿になんとも思わないわけがない。“次は俺”と信じ、ラウンド16のスペイン戦の前日も「ここまで悔しい思いしかしていない。ここで結果を残さないと、もうこの大会で自分にチャンスが来ることはないと思っている」と、強烈な覚悟と責任感を漂わせていた。 そして、迎えたスペイン戦。名和田は2試合ぶりに先発し、高岡は攻撃の切り札としてベンチから戦況を見守った。 このスペイン戦は中2日で続く連戦の4試合目。セネガルとの第3戦が終わった翌日18日にバンドンからジャカルタにバスで2時間をかけて移動し、試合前日の19日に決戦の地・スラカルタへ入った。しかも、午後3時過ぎに空港に着き、そのまま練習場へ直行。荷物は別部隊がバンドンからスラカルタに陸路で運んでいたとはいえ、コンディションを整えるには非常に難しい状況だった。一方のスペインは3試合とも同じ会場で戦っており、この日本戦もスラカルタでの試合。中3日で挑めるアドバンテージも含め、明らかに日本が不利だった。