次世代の「食品物流」、QRコード不要AGVから惣菜ロボまで…スタートアップ事例
「人の知識に依存しない」改善方法
Mujin CEO 兼 共同創業者の滝野 一征氏は同社のビジネスを紹介した。同社については本連載でも何度も紹介しているので(たとえば花王の自動倉庫での活用例などをご覧いただきたい)改めてここで述べることはしないが、滝野氏は「ロボットの性能はソフトウェア次第で大きく変わる。これからは柔軟な自動化が求められる。 専用機ではなく、ロボットとAGVのような汎用機で自動化していくことが重要だ」と述べた。そして同社の提供するロボットコントローラーで周辺設備も含めてすべてをつなげ管理する、いわゆるWES(Warehouse Execution System:倉庫実行システム)に相当する機能を提供してプラットフォームとすると語った。 全体をMujinコントローラーで扱うことで、いわゆる「デジタルツイン」を構築できる。それによって何か問題があったときに、どこにどんな問題があったのかをすぐに、しかも遠隔から調べることができる。もちろん顧客が実際に購入する前にシミュレーションを行うことも可能だ。 滝野氏はこのデジタルツインの強みについて「精度が高いので間違った推測を元に改善提案することがない。過剰投資も防げる」と述べ、「ロボットだけでは困りごとすべてを解決することはできない。お客さまがほしいのは、安くフレキシブルで止まらない自動化。それを実現するために追求してきた。間違いないデータが取得できるのが自動化のいいところ。次に何をするべきか、データを元に言える。人の知識に依存しないようにするのが大事」と語った。
経産省によるロボットフレンドリー環境の推進
同日、別のセミナーでは惣菜盛り付け工程のロボット化について、経済産業省 製造産業局 産業機械課 ロボット政策室の佐藤 大樹氏のほか、日本惣菜協会 AI・ロボット推進イノベーション 担当フェローの荻野 武氏、コネクテッドロボティクス代表取締役/ファウンダーの沢登 哲也氏が講演した。こちらもレポートしておきたい。 経済産業省では「ロボットの未導入分野に、ロボットを導入しやすい環境を作る」ことを「ロボットフレンドリーな環境の実現」と呼んで、「ロボット実装モデル構築推進タスクフォース」という枠組みを作り、施設管理、小売、食品、物流倉庫の4分野で取り組みを進めている。 経産省の佐藤氏はロボットフレンドリー事業の今後についても紹介した。今後は「ロボット導入先進地域ネットワークの構築」を考えているという。実際の現場へのロボット導入の要となるのはシステムインテグレーター(SIer)だ。 地域によって大きな偏りのあるSIerのフォローを行う組織を作ることで、ロボット導入前の事前検討や調査、要件確認、そして運用開始後の運用・改善・保守を、外部機関が担えるようにする。具体的には全国各地域に支援機関を作って要件定義などを行う。この取り組みを全国に広げる。中小企業の困りごとを受け入れて、課題を発見し、作業工程を分解し、ロボットや自動化機器が担えるようにする。そしてSIerにつなごうという狙いだ。 同時に、知識がない企業に対するリテラシー向上も進める。その教え方や伝え方の情報共有も進め、全体の底上げを図る。そして中央と地域が連携してロボット導入を促進する。地域金融機関も取り込んで資金繰りもうまくできるようにしていきたいという。 特にこの最後のファイナンスに関する部分はとても重要だと筆者も以前から感じており、折に触れて講演などでも強調している。今後、実りのある取り組みとなることを期待している。