旅館・ホテルの人手不足に変化の兆し 高水準ながら低下に転じる
「旅館・ホテル」「飲食店」の人手不足割合は低下、特に非正社員では従業員数の増加が背景
2024年3月には訪日外国人が初の300万人を突破するなど、行動制限のない「ポストコロナ」が到来してから1年が経過し、旅行需要は活況だ。 そうしたなか、「旅館・ホテル」は正社員において71.1%の企業が人手不足となり、深刻な状況が続いている一方で、8割に迫る水準まで上昇していた人手不足割合は2023年と比較して低下しており、2024年以降は7割前後で推移している。引き続き他業種と比較して高水準であることに変わりはないが、低下傾向に転じた。
「飲食店」においても非正社員では74.8%と引き続き高水準ではあるものの、8割を上回っていた2023年から低下しており、「旅館・ホテル」と同様の傾向がみられた。 両業種ともに低下したものの、人手不足を感じている企業のなかで従業員数の変化をみると傾向はさまざまで、正社員が増加した割合はいずれも2割台にとどまった。一方で、非正社員の方が増加した割合が高く、特に飲食店では40.0%となった。こうした従業員数の増加が、両業種の非正社員における人手不足割合が前年同月から10ポイント以上低下した背景にあるといえよう。
人手不足割合は高止まりで推移も、就業人口の増加が続けば低下に転じる可能性
人手不足割合は正社員では51.0%、非正社員では30.1%となりそれぞれ高水準で推移している。そうしたなか、足元では月次ベースとして2カ月連続で前年同月を下回った。新型コロナウイルス感染症が「5類」に移行されてから人手不足割合は上昇し続け、2023年から高止まりで推移していたなか、わずかながら変化の兆しがみられる。 2024年3月時点の労働力調査(厚生労働省)では、就業人口は前年同月から20カ月連続で増加した。働き手の拡大が人手不足の緩和につながっている可能性が示唆され、実際に新規求人倍率や有効求人倍率(同)においても2023年より低下した。今後も同様の傾向が続けば、人手不足の割合は低下傾向に転じることも考えられる。 一方で、高水準が続いている業種は引き続き顕著だ。IT人材不足が深刻な「情報サービス」や2024年問題に直面している「建設」「運輸・倉庫」を筆頭に、インバウンド需要の高まりを受けて「旅館・ホテル」「飲食店」でも特に際立っている。それぞれの業種からは、堅調な引き合いのなかで人手不足を理由に受注し切れないという声が相次ぐなど、機能不全が顕在化している。人手不足が常態化すれば業績の維持・拡大が期待しにくくなるなか、中長期的に人材確保や業務効率化に向けた対策を講じられるかが、今後の事業継続を大きく左右するといえるだろう。