【能登被災地へ祈りを込めた羽生結弦の演技】自らの3.11の経験生かし、金沢で優しさで包む舞
被災地に笑顔が広がってほしい――。フィギュアスケート男子で五輪2連覇を果たしたプロスケーター、羽生結弦さんが15日、被災地への思いと祈りを込めて、金沢市内で開催された「能登半島地震復興支援チャリティー演技会」に出演した。 【写真】能登被災地へ込めた羽生結弦さんによる全身全霊の演技 会場は無観客ながら、能登の4カ所ではパブリックビューイングが開催され、ドコモの映像配信サービス「Lemino」が全国に独占生配信。収益が被災地へ寄付される視聴チケット(税込み4500円)は、13日時点で1万人以上(主催者発表)が購入し、30日まで見逃し配信もある。 自らのスケートと表現力で、被災地の一助になる――。そんな思いで五輪2連覇を成し遂げ、プロスケーターとして卓越したスケートを磨き上げてきた羽生さんが、故郷の東日本大震災の地だけではなく、金沢の地にも降り注いだ。
被災者のための精緻な演技
会場にアナウンスが響く。 「続いてのスケーターは羽生結弦。オリンピック2連覇を成し遂げたスケート界のレジェンド。(被災地の方々が)少しでも笑顔になれるような、癒やされるような時間にできれば。そんな思いを胸に、全身全霊で滑ります」 優しいピアノの旋律が被災地のリンクに響く。 大トリで登場した羽生さんが情感たっぷりと「春よ、来い」を舞った。 しなやかなスケーティングは優しさに包まれ、一つずつの動きは視線にも、指の先にまで細やかに神経を研ぎ澄ませる。卓越したスケーティング技術で緩急を演出し、代名詞のハイドロブレーディングは体を水平に沈ませ、氷上をはうように滑る。
起き上がった羽生さんの髪は、エッジが削り取った氷の粒をまとっていた。躍動感を漂わせた高く、幅のあるダイナミックなディレイドアクセルで魅せた。 プロとして遂げてきた進化を存分に込めたこの日の舞は、自分のためではなく、被災した誰かのために滑った。その思いは、共演した仲間の無良崇人さん、鈴木明子さん、宮原知子さんとともに、Mrs.GREEN APPLEの「ケセラセラ」の楽曲を熱唱しながら全力で滑ったフィナーレ後の言葉に凝縮されていた。 「いま現在、つらい思いをされている方々もたくさんいらっしゃいます。『つらくないよ』って言いながらも、どこかで不便を抱えていたり、何か心の寂しさみたいなものを感じていたりする方もいらっしゃるかと思います。どうか、どうか、皆さんがちょっとでも温かい気持ちになりますように」