岸博幸、森永卓郎への親近感を生んだ「共通体験」、スタンスは違っても、経済で目指す方向は近い
森永さんは「本当のことを言って死ぬ」と語り、実際にそれを実践されているが、これは簡単なようですごく難しいことだ。 残された時間とお金を、たとえば旅行や食事、趣味など自分の個人的な幸福追求のために使うという選択肢も考えられる中で、何よりも優先して他者のために自分の言葉を残そうと病身に鞭打って仕事を続けておられることは、言論人として生きてきた森永さんの真骨頂であろう。 お金を稼がなければいけない特段の事情もなく、またこれ以上有名になる必要もない森永さんを、人生の残り時間がもうないにもかかわらずここまで突き動かしているものは何か。
それは日本という国のあるべき姿を示し、長い停滞の時代が続く経済、社会を少しでも良くしていきたい、自分の信じる真実を語ることでそれに貢献したい、という純粋な気持ちの表れではないだろうか。 森永さんは僕より5歳年上だが、1980年代の若き日に霞が関で猛烈に働いていたという共通項もあり、常にアクセル全開で突き進むその生き様は心から尊敬しているし、それこそがいまの日本に足りない部分ではないかと僕は思っている。
実際、多くの人はそれほど意識していないかもしれないが、30年間に及んだデフレの影響で、グローバルな視点で見ると現在の日本はすごく貧乏で弱い国になってしまった。 1人当たりGDPはかつて世界第2位だったのが、いまや世界第38位にまで落ち、また労働生産性もOECD加盟38カ国中31位にまで落ちた。日本のグローバル経済における地位は、かつての「経済大国」から先進国の最底辺にまで落ち込んだと言っても過言ではない。
この状況から這い上がり、地に落ちた日本の経済力を再興するには、企業も人も「とことん頑張る」ことが絶対に必要だ。企業であれば、デフレ時代との比較で「程々の」賃上げや設備投資に満足している場合ではない。企業全体で330兆円もの現預金があるのだから、もっと思い切った賃上げや投資をすべきだ。 そして、個人については、働き方改革や残業規制などの「働き過ぎないほうが良い」という誤った政策と風潮に迎合せず、むしろ仕事やリスキリング(再訓練)などをとことん頑張るべきだ。