<センバツ・頑張れ広陵!>詩に刻んだ、選手のキラリ 教員35年、上岡洋さん 「清風寮」の額 勝利見守り続け /広島
18日に開幕するセンバツに出場する広陵の選手たちを阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)に送り出し、いつもより静かになった「清風寮」の玄関には、詩が書かれた1枚の額(縦約90センチ、横約180センチ)が飾られている。その詩が書かれたのは今から30年以上前の1991年のことだ。【安徳祐】 91年は、広陵がセンバツで2度目の頂点に輝いた年。「ずぶぬれの甲子園このまま終ってしまうのか」「広陵優勝 紫紺の優勝旗が風に舞う」。甲子園での選手たちの様子が表現されている。作ったのは上岡洋(ひろし)さん(57)。88年から広陵で数学の教員を勤め、この春で35年目を迎える。 「優勝するとは思わなかった」。広陵は7年ぶりの出場だったが、周りは強豪ばかり。イチローさん擁する愛工大名電(愛知)も出場した。 詩には「うすもやのなかハトが二羽上空を飛ぶ」の一節がある。 ◇ハトが飛ぶと勝つ 「不思議なもので自陣にハトが飛んでいると勝つんですよ」。アルプス席で一緒に準決勝を見ていた同僚から教えられた。決勝の松商学園(長野)戦も、空を見上げると広陵の応援席だった三塁側にハトが飛んでいた。 翌日、スポーツ紙を買った上岡さん。歓喜の表情を浮かべホームインする二岡聡さん(当時3年)が載った写真を見た時に「頭の中で詩が浮かんだ」。その日のうちに書き上げた。二岡さんはプロ野球・巨人で活躍した二岡智宏さんの兄だ。 後日、詩を見た国語教師が模造紙に書いてくれた。上岡さんは額に入れ部に寄贈。それから約32年間、詩は寮で選手たちの成長を見守ってきた。 上岡さんは時々、額を見に訪れる。「見るたびにあの時の光景が浮かぶ」 2003年のセンバツで優勝した際も詩を書き上げた。「勝つ瞬間を見たら思い浮かぶ」のだという。 三度目の詩ができるだろうか。選手たちが今春、夢舞台で躍動する姿を、上岡さんがどう描くのか、楽しみにしている。