中国とドイツは「次なる経済的・政治的危機」に巻き込まれるのか
8月中旬のこと。早朝にベルリンの街を(ウンター・デン・リンデン通りを下り、ティーアガルテン地区を抜けて)ランニングしたとき、ベルリンが、世界における政治権力の大きな変化の中心にあった数少ない都市の1つであることがはっきりとわかった。ベルリンは、プロイセン帝国とその宰相ビスマルクの支配に始まり、20世紀初頭には科学と知性の中心地としての役割を担い、そして2つの世界大戦、ソビエト連邦による実効的支配、そして東西統一を潜り抜け、現在では欧州の経済大国としての役割までを担うようになった。 現在のドイツは「欧州の病人」である、という大多数の一致した見解は、グローバリゼーションにおけるレジームシフトを象徴している。ドイツには、「多極化する世界」で成功するためのリーダーシップも、外交も、経済政策も、エネルギー政策もない。同時にドイツは、この地殻変動にも似た地政学的シフトのいくつかが、2024年の残りの期間にどのように展開するかを考える場所として、興味深い位置にいる。以下では、筆者が関心を寄せている事柄について書いていこう。 筆者がここ数年、何度が書いてきたのは、「グローバル化した一極集中型の世界秩序」が崩壊を迎えようとしており、国や企業に、「どこの味方につくか」の選択を強いている、ということだ。ウクライナや中東での戦争は、この傾向をより強めている(サプライチェーンを中心とした保護主義も高まりつつある)。 3つの経済極(中国、EU、米国)と、その価値システムをめぐる世界秩序の混乱した進化が、複雑さをさらに追加している。そのなかで、最近起きた2つの出来事は、異なる関係者が、いかにして互いに巻き込まれていくかを物語っている。 第一に、イーロン・マスクがドナルド・トランプと対談し、キア・スターマー英首相を痛烈に批判したことは、米大統領選の国際的な結末にまつわる分極化を生んでいる。 例えば、EUのデジタルサービス法(Digital Services Act、DSA)の責任者であるティエリー・ブルトン委員(EU域内市場担当委員)は、急遽マスクに反対する立場に立ち、マスクに警告を発した。トランプが勝利すれば、「グローバルな支配層」がトランプに同調し、欧州が多大な迷惑を被る、という説得力のある議論が存在する。 第二に、中国がロシアとイランの両方に対する支援を強化していること(例えば中国人民解放軍の兵士たちは最近、ベラルーシで合同軍事演習を行なっている)は不可解であり、習近平はますます党内での対立を深めることになるかもしれない。北朝鮮がその重要な構成要素になっているこうした他国との協力関係は、上海協力機構(SCO)を首尾一貫した戦略的グループへと変貌させつつあるが、外交的に見ると、中国を狭い道へと追いやり、国際舞台での信頼性を低下させるものだ。 習近平の信奉者は、中国は新しい世界秩序を創造しているだけでなく、新しい政府モデル(独裁政治による国家発展)を創造していると主張するかもしれない。しかし西側の視点から見れば(筆者は中立的な立場でありたいと望んでいるが)、中国は「悪い集団」、つまり、その外交政策のやり口が(特に民主主義国家にとって)「事態を悪化させる」ように見える集団の仲間入りをしたということだ。その点で習近平は、党内からより大きな圧力を受けるかもしれない。その中には、習近平が「間違った方向」に舵を切ったと考える者もいるし、景気動向を気にかけている者も多い。 中国が 「間違った側」につくことで危機に瀕しているとすれば、ドイツはどの陣営も支持しないことで危機に瀕している。