「紙」からデジタル媒体へ…業界不振の印刷会社、倒産の顛末
東京スガキ印刷は2024年4月4日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。同社は1959年に設立され、初代代表には都内で印刷事業などを手がけていた堀内一族の堀内豊規氏が就任したが、同年10月に同氏の死去により妻が代表に就任。62年にはその長男が新代表に就任していたが、厳しい経営状態が続き、64年8月に資金がショート。代わって須垣一族が新役員に就任することとなり、商号をスガキ東栄堂に変更した。その後は高度経済成長期となったこともあり、業績を拡大させながら67年に東京スガキ印刷に商号を変更するとともに、事業を行ってきた。 【グラフ】倒産件数の推移 近年においては、カタログ・パンフレットなどの商業印刷をはじめ、包装資材、商品ディスプレーなどの印刷・加工、および書籍などの印刷を手がけ、自販機向けの受注や展示会への出展効果で新規獲得が増加した2018年7月期には売上高約28億4600万円を計上していた。 しかし、コロナ禍の影響で飲食店向けのチラシ印刷などの受注が減少していたほか、紙媒体からデジタル媒体への移行が進む中で業容は縮小傾向にあり、書籍関連の受注も減少したことから、23年7月期の売上高は約21億3500万円にダウン。この間、グループ会社からの資金支援などで体制を維持していたものの、24年に入り大口の不良債権が相次いで発生。資金繰りが逼迫(ひっぱく)するなかで、事業スポンサーの探索や資金支援候補先との交渉が不調に終わり、目前の決済のめどが立たなくなったことから、事業継続を断念した。 23年度の印刷業者の倒産は全国で98件発生し、22年度(59件)から1・6倍、21年度(46件)から2・1倍となった。印刷業者の多くは近年の業界不振の中、経営者の高齢化や取引先の廃業などもあり、業績維持が難しい状況になっている。こうした中で発生する倒産は、取引先を巻き込む連鎖倒産につながる可能性も高く、注意が必要だろう。(帝国データバンク情報統括部)