「完全な違法駐車」でも、車内に人がいるとお手上げ…警察官にできて、「緑の人」にはできないこと
■「人がいればセーフ」は駐車監視員の場合 ---------- 「放置車両」=前出の放置駐車違反の車両 「標章」=クルマのフロントガラスなどにぺたりと貼られる、あの黄色い駐禁ステッカーのこと。「確認標章」ともいう ---------- ばっちり違法駐車でも、「放置車両」でなければ、監視員は手を出せない。明らかに駐車違反のクルマを見つけても監視員が素通りするのは、そういうわけなのだ。 ■ステッカーを貼られる前に戻ればセーフ 監視員による取り締まりは、具体的には次のように行われる。 ---------- 1、定められたルートを、原則2人1組で巡回する 2、違法駐車を見つけたら、車内を覗いたりして「放置車両」に当たるかを確認する 3、放置車両とわかったら、警察から貸与されたデジカメで証拠写真を撮り、貸与された携帯端末に必要な事項を入力する※デジカメと携帯端末が一体型の場合もある 4、貸与された携帯プリンターで標章を印刷する 5、標章を放置車両に貼りつける ※この貼りつけ、道交法的には「取り付け」という ---------- 4まで進んでも、5の前に運転者がクルマへ戻れば、監視員の取り締まりは終了となり、印刷した標章を取り付けずに去る。運転者がいれば放置駐車ではなくなるからだ。 「違法駐車したクルマへ戻ったら、監視員がクルマの中を覗き込んでいた。出て行ったら違反切符を切られる、ヤバイと思い、隠れて見ていた」 こんな行動を取ってしまうのは最悪だ。すぐに出て行けば、放置車両でなくなり、監視員は去るのだ。監視員にはそもそも違反切符を切る権限がないのだから。
■邪魔な違反車両をどうにかしたい場合は… ここまで駐車違反のボーダーラインについて解説してきたが、違反車両に困っている人はどうすればいいのか。 110番通報すれば警察官が臨場する。明らかに違法駐車のクルマを現認して、警察官は何もせずに去る、それはちょっと考えにくい。もしも明らかに違法駐車があるのに、何もせずに去った場合、都道府県の公安委員会に対し通報者が「苦情申出」(警察法第79条)の手続きをすることができ、警察官は立場的にまずいことになってしまう。 実際、警察には駐車問題に関する110番通報が、1年間に85万件以上も寄せられている。 その場に違反者本人がいれば、警察官は最低限、クルマを移動するよう言うはずだ。放置車両なら標章を、携帯プリンターではなく手書きで作成し、放置車両に取り付けるだろう。 ■ステッカーは警察官、交通巡視員も貼れる 標章の作成と取り付けは、警察官や、交通整理などを行う交通巡視員もできる。2022年のデータでは、標章の取り付け数はこうだ。 ※公開データではなく、筆者が情報公開法の手続きを踏み手数料を払って入手 ---------- ・駐車監視員 56万3587件 ・警察官 23万8885件 ・交通巡視員 639件 ※交通巡視員がいるのは全国で8県のみ ---------- 住宅街の道路には駐車禁止の標識がなかったりする。その場合でも、前述のとおり法定違反は成立する。そこが私道でも、道路の体裁をなし、不特定の人車が通行できるなら「交通の用に供するその他の場所」(第2条第1項第1号)に当たり、道交法のカバー範囲とされる。ただし、私道といってもさまざまなので、カバーされない場合もあることに注意が必要だ。 とにかく、駐車違反車両をどうにかしたい場合は、泣き寝入りするのではなく警察に相談してみたほうがいいだろう。 ---------- 今井 亮一(いまい・りょういち) 交通ジャーナリスト 1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。傍聴した裁判は1万1000事件を超えた(2024年6月現在)。 ----------
交通ジャーナリスト 今井 亮一