毎年3割増と安定成長をキープ ノーズショップ代表が語る20代がけん引する日本のフレグランス市場
中森:世界的にグルマンの甘い香りが人気で勢いを感じる。昨年取り扱いをスタートした「ピエール・ギョーム(PIERRE GUILLAUME)」は、グルマンの貴公子と呼ばれる存在で人気が高い。まるで、生菓子のような印象だが、香水として美しく香るのが特徴だ。幼少期の朝食の思い出を表現した“ムスク マオリ”はホットチョコレートが香る人気のアイテム。ムスク系も人気が高い。ニューヨーク発「ノーメンクレイチャー(NOMENCLATURE)」は天然香料ではなく、敢えて合成香料にフォーカスし数々の名香を生み出す芳香分子に着目したブランド。合成ムスクを使用した“アデレット”は肌馴染みがよく売り切れになったこともある。日本の“シソ”を清涼感たっぷりに表現した“シソー”は、通常のミントなどの爽やかな香りと一味違って人気だ。また、タバコ、シャンパンやジンなどのお酒といった香りへの注目も高まっている。消費者の香りに対する解像度がアップしており、一歩、二歩先の香りを求める傾向にある。
コロナ以降生まれた香りのマイクロトレンド
WWD:フレグランス市場および消費者動向の変化は?
中森:日本人にとって強い香りはマナー違反的に思われていたが、コロナ禍になってマスクにより香りを意識しなくても良くなった。自宅で、自分の好きな香りをまとう人が増えた。コロナ以降、人気のものから個性的な香りまで、いろいろな香りがマイクロトレンドとして売れるようになった。コロナが落ち着き、マスクを外すと巻き返しがあるかと思ったら、それはなく、個性的な香りへの需要が広がりつつある。ビジネスとしては、売れ筋の予測が立たず難しいが、文化的な視点からは、香りの好みの多様化は歓迎すべき現象だ。
WWD:日本のフレグランス市場についてどのように分析するか?
中森:香水のニュースが多く、“香水砂漠”から喜ばしい市場に変化しつつある。ポジティブに捉えているが、市場規模はまだ小さい。20~50代を対象に香水を使用しているかを調査したところ、その割合は3割以下だ。また、盛り上がっているのは東京や大阪が中心で、地方はこれからだと感じる。ブームとして終わらせたくないので、香水が嗅覚のエンタメであり、それを届けるニッチフレグランスを知ってもらえるよう地道に努力したい。