「スクリーンを見ることが悪いのではない」 専門家が指摘する「子供のスマホ依存」真のリスクとは
経済学者のタイラー・コーエンは、自身のポッドキャスト番組に社会心理学者のジョナサン・ハイトを招き、悪化が懸念される子供たちのメンタルヘルスについて議論を交わした。 親の政治的信条が子供に与える影響はあるのか、SNSに人類が適応するのは可能なのか──などコーエンが投げかける話題は多岐に渡る。 米国を代表する知性二人による刺激的な対話から見えてくる私たちの未来とは?
右派の家庭の子供たちのほうが幸せ?
タイラー・コーエン(以下コーエン): あなたが上梓した『不安な世代』(未邦訳)に関連する質問から始めましょう。政治的に左派の親と右派の親、どちらが良い親になるのでしょうか? ジョナサン・ハイト(以下ハイト): 右派です。保守派のほうがリベラルな人たちよりも幸福度が幾分か高いとするデータは昔からありますが、その理由は子育てによるものなのかどうか、明らかではありませんでした。 しかし本を書き進めるうちに、2012年を境に両者の差が明らかになったのです。理由を簡単に述べると、子供たちが根ざすコミュニティがあれば、彼らはスマホの中の世界に流されることはないということです。 2012年以降、特定の信仰を持たない世俗的な家庭の子供たちのメンタルヘルスに悪化がみられる一方で、信仰の厚い保守派や家庭で育った子供たちにはあまり影響がありませんでした。
パンデミックで人々が二極化した理由
コーエン: パンデミックを振り返ると、左派の人たちはマスク着用やソーシャル・ディスタンスに腐心していましたね。 ハイト: 保守派はおおむね宗教的であり、物事に非物質的な性質を見出す傾向があります。たとえば、国旗は単なる布切れではないし、十字架は単なる木片でもない。聖書は単なる本ではないと。 一方で、世俗的な人たちは物事を神聖視せず、すべてを疑う傾向にあります。何事にも疑問の余地があると。学者が左派に傾く理由もそれが関係しています。極端な左派はスピリチュアルな存在を信じますが。 右派はパンデミックはウイルスの問題ではなく、政府が国民を管理するかしないかという問題だとみていました。そして、左派が多い医療機関や政府当局を右派は信頼していませんでした。 多くの要因があるものの、こうした理由から当局による経済活動の停止などの命令に従うかどうかについて、人々の行動が二極化したのです。