初公判に出廷した須藤早貴被告＝１２日、和歌山地裁（イラスト・松元悠氏）

　和歌山県田辺市で2018年5月、「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家の会社経営者野崎幸助さん＝当時（77）＝が急性覚醒剤中毒で死亡した事件で、殺人と覚醒剤取締法違反（使用）罪に問われた元妻の須藤早貴被告（28）の裁判員裁判の初公判が12日、和歌山地裁（福島恵子裁判長）であった。 【写真】須藤早貴被告の初公判の傍聴券を求めて並ぶ人たち 　須藤被告は罪状認否で「私は殺していませんし、覚醒剤を摂取させたこともありません」と無罪を主張した。 　直接的な証拠は乏しく、検察側は捜査で積み重ねた状況証拠を踏まえて有罪を立証する方針。一方、弁護側は無罪を主張し、検察側の主張を全面的に争う。 　検察側は冒頭陳述で、須藤被告が「完全犯罪」や「覚醒剤　過剰摂取」などとインターネットで検索していたほか、「トリカブト殺人事件」という動画を閲覧していたと指摘。密売サイトに載っていた番号に電話して致死量の3倍以上に当たる3グラム以上の覚醒剤を注文し、野崎さんが覚醒剤を摂取したとみられる時間帯に二人きりだった点などに言及した。その上で「財産目当てで結婚し、覚醒剤を使って完全犯罪を行った」と主張した。 　弁護側は冒頭陳述で、「分からないことが多い事件」と前置きした上で、須藤被告の無罪を主張。野崎さんが自分で覚醒剤を摂取したり、第三者に摂取させられたりした可能性を指摘した。 　起訴状によると、須藤被告は18年5月24日、殺意を持って何らかの方法により野崎さんに致死量の覚醒剤を摂取させ、殺害したとされる。