任天堂の新作『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』が示した意外性、自由度の高さと懐かしのゼルダらしさが融合
このように『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』ではさまざまなアイテムが使えるのだが、特に注目を集めているのがベッドである。 まず、ベッドは足場として優秀だ。高さが1マスなのでジャンプで乗れるうえに、幅が2マスあるので「ベッドの上にベッドを置きつつ登る」ことができる。つまり、ベッドを階段のような形状にすることで高さを稼げるのだ。 高いところにあるアイテムを手に入れるのはもちろん、ちょっとした崖を飛び越えることもできるなど、とにかくかゆいところに手が届くのである。
そして、ベッドは眠ることでHPを回復できる。通常であればアイテムを使ったり、あるいはHPを回復するハートを探すなどの必要があるわけだが、ちょっと借りて眠ればよいのだから便利である。 さらに、ベッドはほかのカリモノと組み合わせることで空も飛べてしまう。空を飛べることは本作において非常に強力である。不安定な足場を渡らなくてよくなるし、ものすごい高いところにも行けてしまうのだから。 うまく活用すれば、敵とまったく戦わずに寒々しい山の上までひとっ飛び。いくらプレイヤーに自由があるとはいえ、驚くべき移動方法だ。
現在はベッドのすごさが話題になっているが、ゲームの研究が進むともしかしたら新たなカリモノに注目が集まるかもしれない。そのくらい組み合わせによる可能性がありそうなゲームなのだ。 ■「知恵のかりもの」は従来のゼルダシリーズ寄り ここまで『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』の自由な側面を紹介したが、一方で本作は従来の「ゼルダの伝説」シリーズらしい部分もある。 ストーリーはかなり一本道といえる部類で、いきなりラスボス戦に挑戦するとはいかないようだ(『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』では可能だった)。
また、地道に謎を解いてダンジョンを攻略する遊び方もできるし、場所によってはそれが強制されるケースもある。直近の2作品に比べると、昔のシリーズ作品のように、開発者の想定どおりに謎を解くといった要素が強い。 自由すぎる「ゼルダの伝説」シリーズに慣れている人からすると気になるかもしれないが、これは長所にもなりうる。あまり自由すぎると困る人には向いているゲームなのだ。 例えば『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』はプレイヤーに選択肢が多かったため、それゆえにどうしたらよいかわからないという声もあった。わかりやすさという意味では、『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』に軍配が上がるといえよう。
『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』は、古いゼルダと新しいゼルダの融合といえる一作だ。今回もゲーム好きを盛り上げる作品となるだろう。
渡邉 卓也 :ゲームライター