鬼平がコンセプトも!個性あふれる3つサービスエリア、パーキングエリア「羽生PA・蓮田SA・菖蒲PA」
圏央道は、ほかの高速道路と比べて休憩施設が少ないため、菖蒲PAの存在は貴重である。4月には、常磐道と東北道の間の内回りに、坂東PA(茨城県坂東市)が開業予定で、その後ハイウェイオアシスとしても整備される計画があるため、菖蒲PAの役割は少し薄まるかもしれないが、これからも個性的な品ぞろえであってほしいと感じた。 最後に、東北道で東京方面へ向かう場合の最後の休憩施設(首都高の施設は除く)となる、蓮田SA(Pasar蓮田)である。
こちらは2019年7月に移転リニューアルオープンしており、そのオープン当日、TBSのワイドショーである「ひるおび」で生中継され、筆者もスタジオでその特徴などを解説した経験がある。 一般道側に広い駐車場を設け、JRの駅から連絡バスまで出ているなど、地域住民も利用者として考えられていること、防災時の拠点機能を持たせるよう考慮されていること、そして本格的な生鮮食品を扱っていることが大きな特徴であろう。
「旬撰市場」と名付けられた生鮮コーナーには、青果店と鮮魚店、精肉店が入居しており、新鮮な魚介類や野菜・果物、肉類がぎっしりと置かれている。聞けば、施設全体の利用者のうち、一般道からの利用者は1割程度だが、生鮮食品に関しては4割が地元の人の利用であるという。 担当者によれば、「少し高くても良い品を求めたい買い物客に向け、地元のスーパーとの差別化を図り、『地域のデパ地下』の役割を担っている」とのことであった。コロナ禍のように、移動する観光客がパタッと落ち込んでも、地元住民の購入があれば生き延びられるともいえ、サステナブルな戦略だといえる。
■「立ち寄ること」が目的になる一方で あらためて6カ所のSA/PAをじっくり観察して感じたのは、コンビニなどに代表される全国規模の小売りチェーンや飲食チェーンと同じように、新商品や新メニューの開発にしのぎを削るスタッフたちのたゆまない努力である。 休憩するだけの施設が「立ち寄ることが目的」の場所へと変貌したことにより、集客の競争圧力が増し、「SA/PA限定商品」や「季節限定」商品などが次々と投入される。それが活力を生む一方で、現場のスタッフの苦労もしのばれる。
SA/PAのテーマパーク化やデパ地下化は、「観光」や「集客」という面では必要かもしれないが、高速道路のヘビーユーザーからの「人が少ない地味なPAの方がゆっくり休める」という意見も少なくない。 集客を目的とした魅力のある充実した施設とは別に、ドライバーが駐車スペースの混雑を気にせず、気軽に休める静かでこじんまりした施設にも同等に重要な存在意義があるのではないか。そんなことを考えさせられる東北道のSA/PA訪問であった。
佐滝 剛弘 :城西国際大学教授