高反発制限で「ごまかし効かない打撃を」 低学年から一貫…日本一学童の“実戦的練習”
「くら寿司トーナメント」優勝の伊勢田ファイターズ…体が小さくても打てるワケ
投手力がある一方で、外野へ鋭く抜ける打球も際立った。体の小さな選手たちが兼ね備える、確かなミート力が初優勝へとつながった。21、22日に行われた「第5回くら寿司・トーナメント2024 第18回学童軟式野球全国大会ポップアスリートカップ星野仙一旗争奪」(くら寿司トーナメントポップアスリートカップ2024、NPO法人 全国学童野球振興協会主催)で、1976年創部の京都・伊勢田ファイターズが全国約1590の小学生学童野球チームの頂点に立った。 【動画】腕を封じて「胸郭を使う」 正しい打撃習得へ…インサイドアウトが身に付く“正面ティー” 1回戦(兵庫・北ナニワハヤテタイガース)、2回戦(福島・棚倉キッズスポーツ少年団)はともに7得点。準決勝(徳島・喜来キラーズスポーツ少年団)、決勝(大阪・新家スターズ)は勝負所での快打が光った。出場14チームを見渡しても、伊勢田ファイターズの平均身長は決して高くない。むしろ、小さな選手が多い印象だ。昨年から指揮を執る幸智之監督は、クスっと笑いながら言う。 「体の小さい子ばかりで、大きい当たりを打てるわけではない。でも、試合で120%の力を出せば結果はついてくると選手たちには言っています」 野球を楽しみながらも、「常に全力を出せる」チーム作りを基本とする中で、伊勢田ファイターズは日々の練習でも“実戦”を意識する。バッティング練習では、斜め横からボールを投げる、いわゆる通常のティーバッティングは行わない。「投げ手の技術が必要ですし、きちんとボールを投げてあげないとスイングがおかしくなる」と言う幸監督は言葉をつなげる。 「柔らかなボールを正面から投げて打つ練習をしています。子どもたちは、センター中心に強く打てるようになってきた。闇雲にやる素振りを課したことはありません」
木製や低反発バットを使って、確かなミート力を磨く
強さと飛距離を生み出す一般用(大人用)の高反発バットは、2025年から学童の公式戦での使用が禁止される。伊勢田ファイターズも今大会では、その高性能なバットを使用したが、練習では使用せず、木製や低反発バット(通常の少年用金属バット)で「ごまかしの効かない」スイングを求めてきた。実戦的なバッティング練習が“打つ力”の強化につながっているようだ。 「もともとは『守備でリズムを作る』チームですが、子どもはバッティングが好き。小学校を卒業して、中学、高校とこれからも野球を続けてほしいですし、今はバットを『しっかりと振る』ことが大切。私たちのチームが、低学年の頃から持ち続けているテーマです」 試合は、日頃の取り組みの「答え合わせ」。たとえ感覚的に「打球がいい」と思っても、実際は強く、鋭い打球ではないこともあるものだ。打っているつもりでは、技術が身に付かない。本物の打球が打てない原因はどこにあるのか。その真剣な追求が、伊勢田ファイターズの実戦的な練習にはある。「継続してやってきたことが結果として表れた大会だった」と振り返る幸監督は、さらに言う。 「自分の打球に対して、日頃からしっかりと目を向けることは大事ですよね」 監督の息子でもあり、リードオフマンとして優勝に貢献。準決勝では鍛え上げられた技術で鋭い左前安打を放った主将の幸大貴は、チームの強さをこう語る。 「選手全員が野球を知っていて、ひとつのことに対してみんなで取り組んでいるところです」 バッティングに対する意識や練習も、そのひとつ。積み重ねてきた力が、創部以来初となる全国制覇へとつながった。
佐々木亨 / Toru Sasaki