店頭の“香り”体験で売上1.66倍増 新たなマーケティング手法「香りリテールメディア」とは?
ハワイ大手コーヒーブランドでの活用も、イオンスタイル天王町店で検証
香りリテールメディアの実用例としては、ハワイブランドのフレーバーコーヒー「ライオンコーヒー」が実施した販促キャンペーンの「飲まないカフェ」がある。
ライオンコーヒーはハワイ最大手のコーヒー製造・販売会社であるハワイコーヒーカンパニーが製造するフレーバーコーヒーで、バニラやマカダミアナッツ、キャラメル、チョコレートなど、豊富なフレーバーを売りにしている。香りを体験できる場を提供することで、購入や新規ファンの獲得につなげたいと考えたのだ。
┌────────── ライオンコーヒーのキャンペーンでは、コーヒー豆の香りというより、コーヒーを淹れたときの香りの再現にこだわりました。甘く香ばしい香りに包まれる癒やしの時間を提供したいという考えが先方にあり、香りリテールメディアの採用につながりました(米畑氏) └────────── 同キャンペーンは、イオンスタイル天王町店にて6月17日から7月16日まで、イオンナゴヤドーム前店にて6月20日から7月19日まで実施された。販促効果が大きかった店舗では、前月比で約2倍の売上数量になったという。特にドリップパックの伸びが目立ち、試し買いにつながったようだ。 該当店舗の店員にも取材したところ、以下のコメントが寄せられた。 ┌────────── 何種類か香りを試した後、好みの香りで商品の購入を決めたようだった └────────── ┌────────── 親子連れなど、これまでライオンコーヒーを手に取らなかった層の人たちが興味を持った印象があった └────────── ┌────────── 普段は定番の商品が多く購入されるのに対し、香りが試せることで定番ではない商品がよく購入されていたようだ └────────── ┌────────── 香りを試した後にドリップバッグで試し買いされている人が多かった └──────────
ビジネスモデルは2パターン、さまざまな商材での活用に期待
香りリテールメディアのビジネスモデルは、現状、以下の2パターンで進めているという。 ■ 1. 小売業者に年間契約でシステムを提供 小売業者に対してシステム一式をリースする。契約期間は1年契約からで、メーカーを入れ替えながらの長期使用を見込んでいる。小売業者の判断にはなるが、メーカーが小売業者へ販促実施費用を支払い、両社で費用を負担するモデルを想定している。 ■ 2. メーカーに短期間のプロジェクトとして提供 短期間のプロジェクトとしてメーカーに提案し、メーカーが全費用を負担する。期間や店舗数はメーカーの希望に沿うが、原則として短期間×数店舗での実施を想定。1企画単位での支払いとなる(ライオンコーヒーの販促キャンペーンは、同ビジネスモデルとなる)。 費用は規模や契約期間によって異なり、都度問い合わせが必要とのこと。従来のビーズなどのセントテスターと比較してコストダウンになるかというと、そうではないとの回答だった。ただし、これまで見えなかった販促効果の分析が可能になり、セントテスターの管理や廃棄の手間が不要になる付加価値は大きいと考えているという。 現在、各方面から問い合わせがあり、消費財メーカーだけでなく、香水ブランドや飲食メーカーからも関心が寄せられているそうだ。さまざまな商材における販促効果が証明できれば、活用が広がるかもしれない。