店頭の“香り”体験で売上1.66倍増 新たなマーケティング手法「香りリテールメディア」とは?
┌────────── 分析によって示されるのは、棚前を通った人が、どれぐらい立ち止まって、どんな香りをかぎ、どの商品に手を伸ばして、結果的にどの商品を購入したのか、あるいは購入しなかったのかといった消費者行動の集計データです(米畑氏) └──────────
香りの販促のデジタル化、実証実験で売り上げは最大1.66倍増しに
香りリテールメディアが誕生した背景には、芳香剤や柔軟剤、シャンプーなどの消費財メーカーが抱える香りにまつわる課題があった。 香りを訴求したい商品を販売する際、香りを試すセントテスターを売り場に置くと売り上げに貢献することがわかっている。一方で、「ビーズは香りが飛びやすい」「店舗によって設置率や運用体制が異なる」「複数種類を試すのが面倒」「設置や廃棄に手間やコストがかかる」などのデメリットが存在する。 そこで、香りの販促をデジタル化することで、これらの課題を解消できるのではないかと考えた。まずは、アナログの仕組みで実証実験を行った結果、売り上げに効果が見られ、メーカーや小売業者が抱える課題の解決に貢献できる可能性があることが判明したという。
実証実験では、香りを訴求したいハンドクリームを対象に以下の3パターンで香りの販促効果を検証した。
1. 香りリテールメディア+サイネージで販促 2. サイネージのみで販促 3. 販促物なし
2023年8月23日~10月10日の間、1週間おきに上記の3パターンを順番に繰り返したところ、香りリテールメディアが売り上げに効果をもたらすことが判明した。
結果として、「香りリテールメディア+サイネージで販促」の売り上げ効果は、「販促物なし」と比較して1.66倍増し、「サイネージのみ」と比較して1.24倍増しだった。
また、販促物の違いが消費者の売り場の滞留時間に影響を及ぼしていることも判明した。「香りリテールメディア+サイネージで販促」の場合、売り場に10秒以上立ち止まる人や商品に手を伸ばす人が増えた。東芝テックでは、「滞留時間が延びたことが商品への興味・関心を誘起し、購買につながったのではないか」と推測する。