消費増税のダメージは想定以上? 個人消費に見える弱さ
10月1日に消費税率が10%にアップして2か月以上が経ちます。2014年の8%への増税時には、日本経済に大きなダメージを与えたといわれました。政府は今回、そうした景気への悪影響を抑えるために、キャッシュレス決済のポイント還元などの経済対策を行っていますが、10%への増税の影響は出始めているのでしょうか。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストの分析です。 【グラフ】日経平均が好調、バブル最高値も“射程” それって本当?
台風と駆け込み反動減だけではない?
ここへ来て政府の経済対策をめぐる報道が相次いでいます。報道によれば、政府は景気減速に対処するほか、災害からの復興および防災、減災のために10兆円を上回る規模の経済対策を講じる模様です(報道によって金額にバラつきがあるのは定義などが異なるため)。この10兆円超という数字は一部に“お化粧”が含まれているため、実質的には必ずしも大規模と言えない側面もあるのですが、政府が景気対策を検討せざるを得ない状況だと認識しているのは確かです(お化粧とは政府が直接支出する景気対策以外のものを含めることを言う)。その背景には消費増税後の日本経済の足取りが思った以上に芳しくないことがあるとみられます。
消費税が引き上げられた10月のデータをみると、個人消費が大幅な落ち込みを示しました。経済産業省が発表する商業動態統計によると、10月の小売売上高は前月比マイナス14.4%と記録的な落ち込みとなりました。もちろん、こうした落ち込みの背景には増税前の駆け込み需要の反動と、台風19号の襲来による下押し圧力があるため、10月単月の数値を過度に注目することは避けるべきです。小売売上高は8月にプラス4.6%、9月にプラス7.2%と大幅な伸びを示し、ただでさえ反動減が出やすい状況でしたから、そこに台風が直撃したとなれば、消費の落ち込みは当然の結果です。 ただし、11月の数値も弱いと「台風」や「駆け込みの反動」だけでは説明できなくなり、「消費増税のダメージは想定以上」と判断を変更せざるを得なくなります。そこで11月分の消費動向を見極めるべく、速報性に優れた自動車販売、百貨店売上高に目を向けると、両者とも失望させられる結果でした。自動車販売は増税後の10~11月平均が7~9月平均を20.9%も下回り、百貨店売上高は10~11月平均が7~9月平均を16.9%も下回りました(いずれも公表データを基に当社が試算した数値)。台風と駆け込み需要の反動に加えて、そもそもの消費の弱さを疑わざるを得えない結果です。 今回の消費増税は、政府によるキャッシュレス決済のポイント還元などに支えられて個人消費への悪影響が緩和されるとの見方もありますが、これまでのデータを見る限り、そうした見方はやや楽観が過ぎるように思えます。